約 70,234 件
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/137.html
謎の存在、深海棲艦により海路、空路が遮断されている。同時に現れた艦娘による反撃である程度には各経路は回復している さて普段はその燃費の良さを生かし遠征部隊として資材面から鎮守府を支える駆逐艦達 だが彼女らも艦船であり戦闘を欲している。遠征や日常で溜まったモノを戦闘で吐き出す事で遠征任務の効率が上がる のだが 「ふぇぇ…睦月、帰還しましたぁ」 鎮守府近海には強力な敵は出ない。だが睦月型は駆逐艦の中でも装甲が薄く改造改修を行っても時折こうしてボロボロになり帰ってくる。 「お帰り、またこっぴどくやられたな」「うぅぅ、情けないのです…」 しゅんと気を落す睦月を抱きしめる 「ちゃんて帰ってくれば上等さ」「提督…」 睦月の両手が俺の両頬に添える。これは睦月がキスをせがむ時の癖だ。 「んちゅ、はむ…」 小さな舌が必死に俺の舌を捕らえようと動く。それに応じてやればこちらを舌先で突いたり絡めたり。そのたび唾や息が漏れ口元を湿らせる チュッという音を立て唇が離れるととろけた表情の睦月が耳たぶを甘噛みしてくる これはシたいと言うサイン ヒョイッと睦月を抱き上げ司令室の隣にある私室に運ぶ。 シングルベッドに寝かせてやれば羞恥と期待が混じった視線を向けてくる そういえば初夜もこうして中破した睦月を慰めているうちに関係を持ってしまった。その時は不安な目だったが 破れた服を脱がせば見た目年齢の割に色づいた水色のブラが全貌を現す。 その上からまだ膨らみかけの胸を揉み乳首を擦る。 「ふにゃ、ああ、提督ぅ」 再び頬に手を添えられたのでキスをする 今度はこちらから舌を絡め更に睦月の口内をなめ回す 「くちゅ、はふ…ちゅる」 ブラの中に手を入れ直接弄る。先程よりびくんと大きく震え息が荒々しくなるのが分かる 「ん、ぴちゃ…」 とんとんと苦しくなった睦月が軽く叩いてくる。正直もっと睦月の口内を犯したいが無理はさせられない。 名残惜しく口を離せば唾が橋を作りぷつりと切れた 「提督…お願い」「分かった」 と次は下腹部に手を這わせる。パンティの中に指を入れれば確かに濡れた筋がある。 くち、と人差し指がゆっくり肉壁を掻き分け深く入ってゆく。 「ひうっ…指、入って、ひゃあ!」 先程より堅くなった乳首を舐め、次に中指を入れ中を軽く掻く 「ひっああああ!!」 びくんと一段と大きく跳ね指に愛液とは違う暖かな液がかかる。 「お漏らしか…悪い子だ」「提督ぅ…」「今挿れてやる」 カチャカチャとベルトを外せばはち切れんばかりにいきり立ったペニスが顔をだす。 性器同士が触れゆっくり飲み込まれてゆく。体格差もありキツい睦月の中は異物たるペニスを押し返してくる。 「睦月、ゆっくり息を吸え」「ひゃい」 呂律が回らない睦月に息を吸わせその隙に子宮口まで押し込む。 「かはっ」「大丈夫か?」 腹部の圧迫に息が詰まったようで苦しそうな顔になる。だがコクコクと頷き無理に微笑む 少し慣らせば幾分か楽になったらしい。ゆっくり腰を振る。流石に狭く浅い睦月の中にペニスが入り切りはしなかったが快楽を得るには十分。粘液や肉がぶつかる。 「てい、とくっ提督!」「っ、出すぞ」 強い締め付けと痙攣に我慢していた精ドプドプと流れだす 「皆ー!出撃準備はいいかにゃ!」 明るい睦月の掛け声に駆逐艦達がおー!と返す 「じゃ、第三遠征隊。出撃しますね!」 帰って来たら間宮のアイスでも奢ろう。そう思いながら小さくなってゆく彼女等を見送るのだった
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/72.html
「よーし、今日の作戦はもうない。明日に備えて休め」 夜戦を終えて帰投した艦隊の旗艦から概ね良好との戦果報告を受け、 全ての艦に労いの言葉をかけ、この言葉を最後に提督は執務室に帰って行った。 それを皮切りに各々の面子も自室へと帰っていく。 「はー、今日も疲れたなーっと」 その艦隊の中にいた龍驤も疲れたと零しながら伸びをしただけで会議室を後にした。 ここからは艦載機の手入れをするなり寝るなり自由である。 (ちょーっち遅い時間やけど、外行って涼もう) 日付が変ろうとしている時間ゆえ、桟橋にも岸壁にも誰もいなかった。 外に出てきて鎮守府を振り返ってみると、もういくつか光を放出していない窓もある。 (でも提督は絶対起きてるんやろな) 書類関係の面倒臭そうな執務がまだ残っているだろうから、 任務を終えた第一艦隊の面子は眠ることができても、提督はまだ眠ることはできないだろう。 お疲れなこったと他人事のように考えつつフラフラと岸壁を歩いていると、 何か硬いものを踏んづけた。 足を退けて拾うと、それは最近建造された潜水艦「伊168」が持ち歩いていたものだった。 彼女はこれのことを確か「スマホ」と言っていたような。 「そういえばイムヤは今夜遠征だったっけ。 2時間ほどで帰ってくるとはいえ無用心やなぁ」 それを拾ってから、長い時間は経っていないが日付が変わった。 龍驤は人より好奇心が大きい。 そのため、目新しいものに自分の時間を奪われるのも無理はなかった。 テレビなどと違い画面に直接触るという操作には少しの慣れを要したが、 もうそれを色々弄くりながら1人笑うようになっていた。 今一度付け加えておくと、それは人(?)の私物なのだが。 「あっはっは! あーっ、ホンマおもろいなーこの話」 スマホにはごちゃごちゃとアプリが入っていて、 その中にある、笑える話をまとめたアプリを見ていた。 一通り楽しませてもらったのでアプリを閉じ、 他の面白そうなアプリを探していると一つ目に止まったものがある。 「……ん? Hな話?」 何の躊躇いもなくそれを指で触れて開いた。 そこには人によっては抵抗があるかもしれないタイトル文、 あるいは誰でも開いてしまいそうなタイトル文などが多く羅列していた。 このアプリを目にして頬を染める者、先ほどの龍驤のように笑う者など 人によって反応は異なるだろうが、龍驤は苦笑いという反応を見せた。 「うわぁ……、あんまりイメージできんけど、イムヤもこういうの見るんやなぁ」 しかし、あまり興味なさそうな顔で羅列している文章を流し読みしていた龍驤も 一つ気になるものがあったので手を止めた。 「『好きな人に胸を揉まれると大きくなる』?」 龍驤は日本では唯一のフルフラットの空母であると語られてきた。 他の多くの空母は豊満な肉体でこの現代に蘇ったのに対し、 龍驤だけこのような肉体として蘇ったのもそういう根拠があるためである。 この文にある唯一という言葉は褒め言葉にも貶し言葉にもなりうるが、 龍驤にとっては貶し言葉としか受け止められない。 「へぇ……」 実際、胸など血行が良くなるかどうかか重要であって誰が揉むかは重要ではないのだが、 あいにくとそのことはそこには書かれていなかった。 「帰れ」 今日の執務はもう終わっており、手伝っていた秘書艦も自室へと戻っていた。 秘書艦の自室にその主がいたことを確認した上で、龍驤は執務室へ出撃したのだ。 ノックもせずに入ってきたものだから、 部屋の片隅に敷いた布団に横になって本を読んでいた提督は、 避けることもできずに馬乗りにされた。 下から見上げてみても確かにフルフラットだなと心の中で失礼なことを呟きつつ、 口にした言葉はとても短いものだった。 「なんやつれないねぇ」 「明日に備えて休めと言ったろう」 まあ浮いた話も聞かないこの提督だし、押し倒しただけではダメだろう。 こう判断し、その口を実力行使で黙らせる作戦に出た。 実のところ馬乗りをされたときも不快感を感じたわけではないので、拒絶するのが遅れた。 その結果サンバイザーを頭から外し、上半身を倒してきた龍驤にあっけなく唇を奪われた。 龍驤は目を閉じそのままでいるが、提督は目を閉じずに目の前の顔をぼんやりと見ているだけだ。 唇柔らかいな、とか、上半身全体に体温を感じて心地よいだとか、 心の中では並の男とそう変わらないことを思っているが、唇を開放されたあともそれは口に出さない。 提督は少しずつ、静かに欲望に灯した火を燃え上がらせていたが あくまで冷静であることを努める。 「なぜ俺なんだ」 「ウチは別に百合趣味じゃないし」 それもそうだ。 この現代に蘇った艦娘の数ある不思議の一つに、艦娘はなぜみな「娘」なのか。というものがある。 そういえばこの鎮守府でも提督以外に男を見かけなかった。 「それに男なら誰でもええってわけでもないんよ?」 「ウチは提督のこと好きやから」 突然の告白。 しかし提督はなんと返したらいいか分からない。 今まで艦娘にはみな平等に接してきたし、異性を本気で想うということもなかったからだ。 「提督がウチらのことみんな好きなのも知っててやってるから、 今はどうこう言わなくてもええ」 そして二度目の接吻。 今度は提督も目を閉じた。 「ん、ん、ちゅ」 お互い相手の唇の感触を堪能していると龍驤の方から舌を入れてきた。 流石の提督も冷静さを欠く。 「ぇう……んんー、ふっ」 口内をかき回されて提督も自分の舌を差し出し、龍驤の舌に捕まえさせた。 提督も段々と投げやりな思考となっていき、このまま行くところまで行ってしまえという考えに至らせてしまう。 唾液もどんどん分泌されていき、それもまた提督の理性を崩すことを促した。 「はあっ……」 唇を離すやいなや顔を下のほうに移動させていき、 ベルトを外した上で提督のズボンと下穿きを下ろした。 膨らませた陰茎が外気に触れて少しスースーする。 「わあっ。……提督ぅ、もうこーんなにしてぇ……」 自分の体には自信を持っていなかったので 提督の陰茎が既に膨らんでいることは予想外だった。 「胸ないから挟むとかは無理やけど、できることはあるんやで……!」 「ぁむ、……ん、んう、んー、んちゅ、うう、ぇろ」 色々と吹っ切れた龍驤は行動に移すのが早かった。 陰茎をいきなり口に含み、拙いながらも舌を使い顔を上下させ快感を与えようとする。 提督もまた抵抗することはなかった。 「ん、う、ぐ、んぐっ、んむっ」 「……んあ、提督の、大きすぎや……」 「……ぁむ、えう、ちゅ、ちゅ」 「んぢゅううううッ」 「ッ!」 先ほどのイムヤのスマホで他のこともそれなりに予習した龍驤は 早速その知識を総動員すべくバキュームにかかる。 提督は歯を食いしばって繰り返し訪れる快感の並に抗った。 バキュームをしている間陰茎に歯が痛くない程度に無意識に添えられ、 それもまた快感を呼んだ。 「ん、ふぅ……」 一旦息継ぎをし事を再開する。 バキュームをしたかと思えばまた舌での愛撫に戻ったりと緩急をつけた。 「ふ、んんっ、ちゅる、ちゅる、ちゅう」 「んう、ううっ、ふ、んむ、ん、れろ」 「レロレロレロ……」 「ああ……」 予習したとはいえこんなことをするのは初めてなので 拙い動きでも仕方がないのだが、確かに提督は快感を感じていた。 ここ最近は処理をしていなかったことも手伝い、普段よりもすぐに限界が見えてきた。 「う、そろそろ出るぞ……」 「んんっ、ええんやへ、らひても」 「く、ああッ!」 「ん、んうううううッ!」 「はあっ……はあっ……ああ……」 「ん……う……うう……」 「……ああ? おい?」 陰茎を抜くこともせず、龍驤の口にそのまま放出した。 しばらくして陰茎から口を離したが、 龍驤は一向に生臭いはずのそれを吐き出そうとしない。 「龍驤? 無理して飲むことはないんだぞ? 出しちゃっても……」 「んんっ! ……ん、んぐ、ん、ごく……」 声をかけても首を振り、吐き出さずにそれらを嚥下したようだった。 「ん……はーっ、はーっ……」 「んもー、提督、量多いで……。どれだけ溜めとったんや」 「あ、ああ……その、3日ほど……。 というかお前、なんで飲んじまうんだよ、あんな汚いもの」 「いやあ……確かにまずくて濃いだけだったけど、 汚いとは思わんで? だって提督のやから……」 普段の凛々しい軽空母からはかけ離れ、 今やその顔は誰が見てもただの女の顔だった。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/504.html
(序) ――本当のことを伝えれば、助けてくれるとでも云うのだろうか。 瞬時の褪めた疑いの後、嘘を吐く意味など無い事に気付き――波蹟を刻んだ敷布、淫靡な濤に乱れた寝台の上に 長髪を纏せた汗ばむ裸身を横たえた女はやがて囁くような声で応えた。 「眠れないのです。提督にこうして戴いた後は、少しは――揺蕩えるのですけれど」 口調は丁寧。しかし全身を慄せる絶頂から解放された後、急速度に冷えゆく肉体と興心の齎す気怠さはその声色 から拭えようがない。 男の隣に転がったまま、俯臥せの視界を塞ぐ黒髪を無意識に片手で掻きあげると、その感が一層強くなった気が して――赤城は自躯を笑った。 終わってしまえばその行為には甘美も夢酔も幻想も、まして清廉さなど絶対にない。まるで排泄と同等の無意味 で動物的なものにすら――そう。賢者の思考は、女にだって訪れる。 まるで十重も二十重も齢を重ねたかのような、どこか白鬱とした気分だった。最も、艦娘が歳を重ねられるのか は自分にも分からない。 生温いような温度に包まれた春先の深夜、提督の部屋。 二人だけの情事が終わり、脱力した身体を男の寝台の上に丸めるように背を向けた赤城に対し、多分に気遣いを 含んで発せられた提督の問いには、彼女はそう答えるしかなかった。 「そうか。……といっても、僕も赤城くんと毎日一緒に寝てあげられるとは限らないからな。実際、明日の夜は 遠方へ一泊の予定になった」 「そう……ですか」 では一人でまた、震えながら長い夜を過ごさなければならないのか――思わず俯き、赤城は無意識に掌中の白い 敷布を握りしめた。 慣れぬ深酒に強かに酔った彼女が介抱される所から済し崩しに始まってしまった、本当に、身体だけの関係。 好意を囁かれたこともない。しかし仮令偽りであっても構わないと思う程に、彼女の精神は安寧に飢えていた。 相手はまるで将棋や花札の対戦をするかのように、淡々と、日を置かず寝所に来る女の相手を勤め上げる男。 雅な顔立ちと軽口好きの裏に、どこか乾いたところを持つこの上司は、そのような関係には適切と言えるのかも 知れなかった。 「少しお休みを取るかい?加賀くんも言っていたが」 「加賀さん…が?なんと?」 性格は天地ほど違えど同じ一航戦の同期、気が置けない親友。だからこそ、彼女が今の自分をどう見て、どんな 言葉を自分の評価として持っているのか、赤城の心は不安に沈む。 「それがいきなり珍しくも司令室に来て、『赤城さんを前線から下げてあげてください。危険です』。ってさ。 ……今の似てた?」 戯けた言い方にしてくれてはいるが、つまりはやはり自分は戦力外である、と彼女が見做して居るということに 違いはない。 「『超えられない壁を心に残したまま戦っては、本人も僚艦をも危険に晒すことになります』と。……心配して くれているんだと、僕は思うけれど」 「…そう…ですか…」 「一体、何が君の不安定の元であるのか。そろそろ聞かせてくれないかな。僕にも、何かできることがあるかも しれないし」 提督が僅かに見せた心遣いに(それすらも上司と部下の延長線でしかない内容だが)、赤城は重い口を開く。 「………桜、が」 「桜。そういえば、そろそろ綻び始めて来たね。それが?」 「桜の花が、怖いんです」 そう呟いた彼女の瞳は絶望の淵を滲ませ、文字通り何も見てはいなかった。 (二) 一体如何なる意志と力が自分を此処に蘇らせたのかは、分からない。 しかし心形ある艦娘として太平洋戦争の終わった後の時代に現れたいま、彼女はかつての戦闘や、戦争の流れに ついて多くの資料に自ら触れた。 単に航空母艦・赤城亡き後の戦争の流れについて知りたかったこともあるし、敗戦に至る人々の思いも知りたく 資料室や街の書店・図書館までも許される限り訪れ、読み続けた。 そこに記されていたのは、悲惨そのものだった。 飢餓に苦しむ兵士たち。片道切符を手渡された飛行士たち。本土への度重なる爆撃、多くの民間人の犠牲。 戦争とは殺し合いではあるが、一流の軍人たち、最新の兵器たちによる力比べではなかったのか。 そして――その引き金を引いたのは、真珠湾攻撃部隊たる、自分たち。 その戦争の行方を決定付けたのも、あの悪夢のような南方の一戦に沈んだ、自分たち。 何故、始めた。何故、続けた。何故――負けた。 街中でふと見上げた、まだ蕾にもならないそれが桜の木であると悟った瞬間。 聞こえた気がした。頭の中に、声が。 それから、まるで自己犠牲精神の象徴とされたような薄血色のあの花が開くのを見るたびに、風に揺れる一片を 見つけるたびに、亡魂の声を感じ、怨嗟がそこに還ってきているのではと感じた。 ならば満開の桜には、かつての自分の搭乗員を含めたどれほどの犠牲者たちの、無残な死を強いられた者たちの 心が乗っているのか――それに責められる自分を想像すると、気が狂いそうだった。 何故、始めた。 何故、続けた。何故、負けた。 執務中。窓の外に目を向けるのが、怖くなった。 出撃時、帰還時。この花のある陸に、鎮守府に戻りたくないとすら最近は思う。 そんな自分を嘲り、嬲るように、徐々に桜は綻び始める。ただ蹲り、耳を塞いで盛りの時期を越えたとしても、 次の春も、その次の春も、無限にそれは訪れる。 「――こんな思いを、するのだったら」 敗戦も何も知らずに海底に沈んでいたほうが、よほど幸せだったのかも知れませんね。 そう抑揚のない声で赤城は呟いた。 提督はその重過ぎる問いに答える言葉を持たず、ただその細い肩を抱くことしか出来なかった。 (三) 濃紺に濃紺をただ只管に重ねて作られたような、蒼黒の世界。 重い水圧が、鉄の総身を軋ませる。 気が付くと、赤城は仄暗い水底にいた。 加賀さんもきっと、私の事を嫌いになったに違いない。 いいえ――提督だって、戦えない空母に用は無い。といって愛人の立場でいるなど、自分にも彼にも似合わない だろう。 でも。鎮守府を去ったとしても、何処へ行けば佳いというのか。ならばもっと頑張って――しかし一体、何を、 どうやって? 虚ろな心で仮初めの秘書艦として一日を過ごしたのち、提督不在の一人寝の夜。そんな堂々巡りの迷妄に鬱々と 嬲られながら、自室の暗闇の中、膝を抱えて寝台の上にいた――はず、なのに。 魚影以外に訪れる者もなく、多くの死を抱えたままの永遠の静寂――海底。何十年も見慣れたその世界に自分は 再び還っていた。 ここがやはり、愚かにも挑み、敗けて沈んだ、私の正しい居場所なのか。 冷たい海水と安らかな暗闇に身を任せた消失寸前の意識が、そう悟った途端―― ――轟、と。 かつて沈降し着底して以来の、はるか遠くまで響く鐘のような一瞬の鈍く低い音が、暗い海中の静寂を破った。 聴き違えではない――その証に、やがて物言わぬ重たい鉄の塊であるそれ自身が静かに震え、軋み、水圧の牢獄 に泥を舞わせながら数十年ぶりに、海底に蠢いていた。 そして何か力強い意志に引かれるように、それは冷たい海の底から離れ――灯火の無い隧道のような暗黒の世界 の中、静かにその巨大な残骸は浮上を始めた。 見えぬほどに、ゆっくりと。しかし、確かに。 暗い海中を彷徨っていた、小さな小さな海蛍のような灯光が、其に次々と寄り添い、身に溶け込むように消えて ゆく。そのたび、微かに暖かい何かが錆びた精神を照らした。 無限にも感じた時の果て、鏡のような水面が見えてきた。 両手。両脚。――黒髪。乳房。 近づくにつれ、そこへ映る自身はいつしか錆び尽くした醜い鉄塊から、瑞々しい斯良多麻の肌と射干玉の髪とを 持った娘の裸形の像を結んでゆく。 やがて世界の際、極限まで近づいたその鏡像とひとつになり――そして深海と同じく暗闇の支配する夜の海上へ 艦娘の姿をもって坐々と静かに浮かび上がる。 そう思った、次の瞬間。 赤城は、満開の夜桜の下にいた。 「……!」 見渡す限り。 はるか遠方までの視界を埋め尽くし、まるで大質量の雲霞のように咲き誇る、夜櫻華の群生。 雅な芳香を運ぶ、あたたかな春の柔らかい風。揺れる薄紅の花々を密やかに照らす、霞雲を薄衣のように纏った 朧月の光蔭。 風に揺れる枝。宙に比良比良と漂う、無数の花片。月の光。 衣髪をそっと撫でゆく風の他には落針すらも捉えない補陀落の静寂のなか、唐突に自身を包み込んだその光景に 圧倒された赤城は絶句して地に立ち尽くし、動くことさえ出来なかった。 ――夢。なのか。 桜。 桜。 あれほどまでに恐れ慄いていた花々であったはずが、最早奇矯を超えて壮観の域に達したこの場ではそんなもの 微塵も感じ得ない。 目をめぐらした彼女は、やがて一際大きな盛櫻の樹元に、会いたくて堪らなかった白制服姿のその人影が立って いるのを発見し、再び息を呑むこととなった。 「提……督……?」 「やあ。赤城くん」 住の江の、岸に寄る波よるさへや、という奴かな。いつもの動じない軽口は、紛れも無い本人のものと思えた。 しかし。私の夢ならば、何故私の知らない言葉がその口から出てくるのか。…赤城には、分からなかった。 「これは、夢、なのですか。私は」 「そうかもしれない。そうではないのかもしれない。僕は先刻、亡くなったはずの、写真でしか知らない祖父に 逢った。これから此処に赤城くんが来るから、いくつか伝えてくれと言われたよ」 ちなみに孫の僕に対しては一言も無しだ、と提督はにやりと笑った。 「まあそんなことはどうでもいいんだがね。君たちの存在がある以上、奇妙な事もあるものだ、としか言えない だろう」 そう言った年若い提督は、軽く笑って制帽を脱ぎ、穏やかな口調で続けた。 「――まず、ひとつ。僕の隠し事を明かせと言われた」 僕の祖父は、航空母艦・赤城の乗組員だったんだ。提督が事も無げに言った言葉は、赤城に砲弾直撃以上の衝撃 を与えた。 提督は構わず――笑みさえ浮かべて――続ける。 「真珠湾にも参加して、ミッドウェーで被弾して死んだ。……だから僕がこの道を進んだのは、幼い頃から母に 聞かされた、まさに彼らと貴方の姿に憧れてのものだったんだ。憧憬れの『赤城』に会えた時の歓喜と刻眩き。 君に悟られないように苦労したよ」 「そんな……そんなこと、では、私は……」 貴方の祖父を戦争に巻き込み、この世界から永遠に奪った、呪われた――青褪めた赤城が己の存在に止めを刺す ような、その絶望を口にする前に。 「ふたつめ。祖父その人から、愛する母艦への伝言だそうだ。…いいかい」 提督の静かな口振りが、その言葉が、取り乱す既の所で彼女を押し留めた。 「『貴女の世界を精一杯、生きて欲しい。我々に、堂々とした生を全うさせてくれたように』」 「……!」 ざぁっ、と静かなざわめきを立てて、吹き抜ける風が桜の花びらを舞わせた。 両手で口元を覆い、震える瞼を静かに閉じた赤城の眦から、一滴の涙が静かに零れ落ちた。 「……どうも羨ましいね。君も、爺さんも。妬けるよ、僕は」 ――ああ。 私は、なんと愚かだったのだろう。 この桜を、亡くなった魂を、怖ろしいなどと。 かつての自分と仲間たちが精一杯、信じることのために為そうとしたこと。少なくとも自分には、そこに恥じる べき偽りは無かったのだ。 「…分かったかい。航空母艦、赤城くん」 「はい……はい。上手に言葉には出来ませんが……受け取りました。――確と」 開いた眼差しは、滂沱と感謝とに濡れて――しかしそこに、最早迷いの蔭は寸も無かった。 「よろしい。ではここからようやく、僕の言葉だ。折角だから最後に、もう一つの隠し事を明かそうと思う」 「はい?…きゃっ」 急に右手を引かれよろめいた赤城が、桜の大樹にその背を受け止められた瞬間。 逃がさないと言わんばかりに片手を幹につき、提督は目を丸くして驚く赤城に顔を近づけ―― 「好きだ。赤城。どうしようもなく、大好きだ。――僕のものになってくれ。今、ここで」 ……この人はどうしてこう、真剣な心を格好良いのだか悪いのだか分からない戯けに包むのが好きなのだろう。 心中で苦笑しつつも、赤城は本当に久しぶりに軽くなった心持ちで頬を染め、提督の気持ちを静かな接吻と共に 受け入れた。 「私も。貴方が大好きです。…貴方のものにして下さい。今、ここで」 桜の樹だけが、再び唇を合わせる二人を観ていた。 (四) 併せから進入した掌が、赤城の片方の乳房を揉みしだく。 合わせたままの唇、絡む舌から唾液と嗚咽が漏れる。 やがて緋の襦袢の奥、提督の指先が色付いた胸の尖端を摘み、鳥が啄むように軽く引くような愛撫を始めると、 樹に背を預けた赤城の身体は快感に揺れた。 「可愛いよ。赤城」 「…っ、ふぁ…っ、」 返事もままならない、熱く小刻みな甘い呼吸が、提督の牡を高める。 着崩れた併せに手を掛け、そっと左右に開くと、両肩に続いてふたつの白い乳房がまろびでた。それぞれの尖端 は硬く屹立し、谷間は汗に濡れている。 「汗かきだね。赤城は」 「…え…もう何度も、お相手を…」 「御免ね、今更気付いた。ちゃんと赤城のこと見てなかったみたいだ。…今日は見てるよ。赤城がこんなにも、 僕で感じてくれていること。一つも洩らさず、全部見る」 「はい…はい、私の凡てを…見てください…」 「勃ってる」 ぴん、と指先で感じる胸先を弾かれ、思わず声を上げて仰け反った裸の背を桜の幹が擦る。痛みもなく抱き止め てくれたそれに、震える膝に力が入らなくなってきた赤城は完全に裸の上半身を預ける。 谷間の汗を舐め取られ。 尖端を口内で転がされ。 そして再びの接吻に朦朧としつつも、指先で首先や胸元の感じる処を幾重にもなぞられ。 その度に絶頂に達するのではとさえ思われる快楽が赤城の娘体を震わせ、雌声を上げさせた。 やがて淫らな熱を帯びてきた陰間の感覚が切なく、赤城は下帯のじっとりとした熱い湿りを感じながら、気づく と無意識に自らの大腿を何度も擦り併せていた。 「感じてるね。本当、もう何度も抱いたはずなのに――今日は特別、君と君の身体が、愛しくて堪らない」 「はい――はい、わたし――も、きょ、今日は、もっと――ん、あっ…」 提督の指先が、手慣れた動きで赤城の袴を解く。 さらさらとそれを地に落とすと、布地の少ない純白の薄絹による下帯をも綻び、解き落とす。 赤城の、微かな茂みに飾られた女陰が、外気に露になった。 「あっ…」 乳房への愛撫に熟れ切った赤城の肉体は、直接触れられてもいない秘裂を欲望に熱くたぎらせ、肉感的な陰唇を 物欲し気にひくつかせていた。 「み…見ないで下さい…恥ずかしいです…」 「全部見ると言った。大丈夫。綺麗だよ、赤城」 しゃがみこんだ提督の右手が、女陰を更に開かせるように赤城の白く柔らかな左腿を軽く持ち上げる。 「は…はい…赤城は、提督に愛して戴きたく、こんなにも…はしたなく…」 慣れぬ羞恥と、それがもたらす快楽に震える赤城の多汗と多情の雫が、白い健康的な太股を伝い落ちる。 男の視線が堪らないのか、充血した肉襞がひくりと動くたび次々と新な雫を溢れさせる情景は、女の相手に慣れ ているはずの提督の劣情をも著しく刺激した。 提督は華に誘われる獣のように淫らな性器の中心、真珠のような薄紅色の赤城の陰核に近付き――遠慮無く蜜を 味わうべく、秘肉に舌を這わせた。 「――――-っ!」 電流のような極上の快楽に激しく赤城が叫び、悶える。しかしその身は逃げる事はせず、更に快楽を求めるかの ように、自らの秘所を愛する男に押し付ける。 幾度も啄み。 容赦無く舐め上げ。 音を立てて吸い。 髪を乱して指を噛み、思わず提督の頭を鷲掴みにして小刻みに震え始めた赤城が気を遣るかと思われた寸前―― 提督は、舌での愛撫を止めた。 「赤城。…抱かせて貰うよ。僕ももう、我慢ならない。今日の君は、愛し過ぎる」 「はい。私も、なんだか嬉しすぎて、気持ち良すぎて、おかしくなりそう、です…」 もっと、乱れさせて下さい。 赤城はそう言いながら桜の幹を抱くように自ら後背を向けると、両脚を建たせたまま肉付きの良い臀と熱い秘所 とを愛する男に差し出した。 期待に息を荒げ、汗の雫を背の窪みに、揺れる両乳の先に滴らせ、軽く開いた内股をも淫らに光らせたその姿は 堪らなく扇情的で。 提督は劣情に完全に飲み込まれ、言葉を掛けることも忘れて取り出した自らの屹立したそれを、赤城の柔らかな 女陰にあわせ―― 一気に飲み込ませ、突き入れた。 互いの呻きが、薄紅の森に染み入ってゆく。 めくるめく夢のような、悦楽と、至福の時。 突き入れ、引き出し、その度に接合部から伝わる熱く滑る感覚が、脳天から脚先までもを、幾度も幾度も、甘く 痺れさせ。 子宮の口を先端に突かれ、恐ろしいほどの快楽に赤城が悶えると。 膣肉にきつく締め付けられ、全身で吐精を要求された提督が呻く。 幹を揺らされた桜の木から、花びらが幾重にも赤城の乱れ姿を飾った。 叫ぶように互いの名を呼び、愛を伝え合う。 更なる快楽と頂点を求め、本能のままに腰が、脚が、誘い犯すため妖しく揺れる。 ――やがて。 絶頂の嬌声が夜桜の杜に高く高く響き、尾を引いて消えていった。 (五) 翌朝。 何らの奇異もない、至っていつも通りの鎮守府の朝。調理場の匂いが、一日の始まりを告げていた。 「あ、いたいた。加賀さーん」 鎮守府食事処の長脚台の隅、他の艦娘から若干の距離を置いての朝食中に背後からいきなり抱きつかれた結果、 加賀は左手に持った白飯盛りの茶碗に不可抗力で思い切り顔を突っ込むこととなった。 「…赤城さん。今朝は随分と元気な様子ね」 赤城とは対照的に感情表現の苦手なはずの彼女は茶碗から憮然とした表情を持ち上げ、非難を込めて彼女を軽く 睨みつける――が、赤城はそれを至近距離で平然と受け止め、隣いい?などと聞いてくる。 「どうぞ」 「ありがと。間宮さん、いつもの大盛りね~」 赤城の軽やかな声が、食事処に響き渡る。以前と全く同じ、気軽さと優しさの奥に凛とした強さを感じる、加賀 の好きだった彼女の声。 「どうやら完全復活したみたいね」 「うん。心配かけてごめんね、もう大丈夫」 心配なんかしていないわ、と右隣りの椅子に着席した赤城のほうも見ず、抑揚のない地声で加賀は続ける。 「二航戦や五航戦の娘の前で、無様な姿は見せないで欲しい。それだけよ」 済ました顔で味噌汁など啜る。何故だろう、今日のは久々にとても美味しい。 「ええ。私たちは栄誉ある一航戦だものね。提督とは、ちょっと恥ずかしいことになっちゃっていたけれど…」 「関係を精算する気になったのなら、手伝うから言って頂戴」 「いいえ。私が元気になれたのは結局、提督のお陰なの。提督ともっとずっと一緒にいたい。今は心の底から、 本気でそう思ってる」 折角、気を効かせて小声で訊いたというのに。食堂にいた何人かの好奇の視線を瞬時に集めたことを本人以上に 感じつつ、加賀は思わず溜め息をつく。 「あの男は天性の浮気性よ。にも関わらず金剛さんに雷さんにと好敵手も多いわ」 「知ってる。――諦めさせたい?加賀さんは」 私の答は変わらない、と加賀は言った。 「貴女の選んだ航路を援護するわ。出来ることがあったら何でも言って頂戴」 かがさーん、と戯けて感極まった風に再び抱きついてきた親友を今度は右手で的確に阻止しつつ、加賀は僅かに ――本当に微かな――安堵と満足の笑みを浮かべていた。 (結) 幾許かの薄紅の片を乗せた晴天の春風が、爽やかに頬を撫でる。 折しも前庭に植樹された見事な数本の桜が、今にも見頃を迎えようとしていた。 蒼穹の柔らかな日差しが、木々と舗装道路と自分とを照らしている。 春の朝、大好きな人を迎え待つ時間ほどに、心を浮き立たせるものがあるだろうか。 やがて黒塗りの高級車が、正門から鎮守府正面玄関へと音もなく滑り込んできて――後部席から降車した提督を 秘書艦である赤城は笑顔で迎えた。 「戻ったよ。――桜は平気になったようだね、赤城」 「お帰りなさい。――はい、お陰様で」 互いの顔に何かを確かめるかのように、僅かな距離で立ち尽くして見つめ合う二人。 憧憬を伝達し在った記憶、そして想いを交わした記憶の幸せな共有は、そこに疑い様は無かった。 「これからも宜しく。頼りにしてるよ、赤城」 「はい、提督。全て私にお任せくださいませ」 交す微笑に情愛を伝えあうは、言下の囁き。 廻る新たな時代を祝福するは、桜花の寿ぎ。 (完) これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/199.html
前回の話 ――大井―― 「北上さん、もう朝よ」 私の一日はまず相部屋の住人を起こすところから始まる。 起床時間になっても起きないのはこの親友のイメージにピッタリだろう。 「……んぁ?」 締まらない寝起きの様子は提督とよく似ている。 提督は目覚まし時計か何かの装備でもあるのか寝坊はあまりないが、 寝起きに見られる締まらない顔は日中ではあまり見られない。 ちなみにセクハラする時は下手に真剣な時よりも顔が引き締まっていたように見える。 「あーおはよー」 「今日も演習艦隊につくんだから、しっかりしてね」 「うーい」 本来このように私達艦娘の士気を上げるのは提督の役目だろうが、 さっき言ったように朝はあまり頼りにならないのでここは親友たる私の役目だ。 のそのそ布団から寝間着のまま出て行くのを見送り、手早く布団を片付ける。 昨晩は北上さんが眠ったのを確認して提督の部屋を訪れ、提督との夜戦を初めて本番込みで行い、そのまま眠った。 心許す親友の北上さんだろうと恥ずかしいものは恥ずかしいので、朝起きて提督と別れ、 昨晩のことを悟られないよう普段通り朝食を1人で済ませようとすると、珍しいことに北上さんがこの時間に食堂に来た。 ちなみに寝巻きのままではない。 北上さんは普段朝食は遅めに取っていたと思うがどうしたんだろう。 相席の誘いを受け入れ、共に盆の食事に手をつける。 まず味噌汁で口内を潤そうと啜る。 「大井っちさー、昨日の夜中どこ行ってたの?」 「ッ! ゲホッカハッ」 「わわっ大丈夫?」 味噌汁を箸でかき回す北上さんからの予想だにしなかった突然の問いかけが私にはクリティカルヒットした。 席を立って私の背中を摩り、咳き込む私が収まるまで待ってくれた。 「ケホッ、ん……北上さん、知ってたの?」 「まーね。というか大井っちが夜中抜け出したの昨日だけじゃないでしょ」 席に戻った北上さんはずずーっと音を立てて味噌汁を啜った。今日の具は大根と人参の短冊切りだったか。 私は返答に困り、とっさに返すことができない。 「えっと……」 「もしかして提督ととうとうデキた?」 「き、北上さん、何を根拠に……」 「だってさあ、あむ、提督だって大井っちのこと、好きって丸分かりだもん。 特に今日の大井っち、朝からいつもより嬉しそうな顔してるじゃん」 「――ッ!」 浅漬けの蕪をつまんで食事を進める北上さんに動揺させられた私は箸を動かすのも忘れて、左手を顔に当てる。 今日の私の顔はそんなに緩んでいるのか? 「あっやっぱり図星?」 「えっその――!」 鎌をかけられたらしい。 北上さんにここまで弄られるなんてそうそうない。 顔には出ていなかったようなのでまだ取り繕う余地はあるはずと考え冷静を努める。 もう取り返しがつかない気もするけど……。 「なっ何もないわよ? 提督はあくまでも上司なんだし……」 「ふーん?」 「……」 今日の北上さんは無駄に冴えている。 ニヤニヤする北上さんと目を合わせているとどんどん私の隠していることを暴かれそうな気がして、私は目を逸らした。 顔が熱くなってきた。 「ま、気のせいってことにしとくよ」 気のせいだと思うならニヤニヤするのをやめてほしい。 それからの私は何とか関心を逸らそうと色々な話題を持ち出すことに努めたが、結果は失敗に終わった。 食事は本来喋りながら進めるべきではないのだがそこは目を瞑っていて、って、私誰に弁解してるのかしら……。 ――提督―― 午前の演習も済み、もう少ししたら午後の演習に赴こうと思うので、執務を中断し休憩を入れる。 それにしてもたまには茶葉から離れて珈琲を嗜むのも乙なものだ。 日本人ゆえに米や味噌汁に飽きることがないように茶も飽きたわけではないが、 気分で他の嗜好品に手が出るのもまた不思議なことではあるまい。 しかしカフェインは毎日取っている気がする。 過剰摂取でなければいいのだが。 「提督、いかがですか?」 「美味いぞ」 「それは何よりです」 こうは言うがインスタントだし、大井は大した苦労はしなかっただろう。 ところで、味噌汁や煎茶などの日本食を音を立てて食すのは普通だが、そうでないもので音を立てるのはマナーによくないという。 「……はぁ」 もちろん珈琲は日本食なんかではなく、少し冷ましてから音を立てずに飲んでいたので、 今の小さな溜息を聞き取ることができた。 「……どうした」 「あっいえ、大したことじゃないんですよ。その、肩が凝ってきただけで」 この時自分はある重巡の台詞を思い出した。 悪戯心が自分を椅子から立ち上がらせ、秘書席の大井の背後を陣取る。 不審そうに首を曲げてこちらの様子を伺う大井の両肩に両手を置いた。 肩をビクつかせたのがよく分かったが、無視して手と指を動かす。 「……私、肩を揉んでくれとは言ってませんよ?」 「肩が凝ってると聞かされて無視する人間にはなれんなぁ」 「まぁ、提督らしいですね」 その呆れた声には安堵のような調子も見える。 最初は少し警戒こそされたが、手を振り払われないので用意していた台詞を意味もなく得意げに使ってみる。 「愛宕も言っていたように、やっぱり タンクが大きいと肩が凝る んだな」 要はセクハラがしたかっただけだ。 そしてそのタンクをさわさわ。 「……」 ピシッという擬音が聞こえた。 ただ触っているだけなので刺激は少ないと思う。 が、拒絶するならともかくこう無反応ではどうしたらいいか分からない。 笑えばいいと思うよ、などと頭の中で何かが、いや誰かに囁かれたがきっと気のせいだ。 おかしいな、多少なりともスキンシップは許されるようになったはずだが空気が死んでいる。 大井のタンクから手を退かすタイミングを見失った。 「……提督?」 張り詰めた空気に突然大井の声色が入れられる。 それはまるで外の冷たい空気を付与させてきたかのような声で、自分の背筋を震わせられる。 大井が今どんな顔をしているのか、分からない。 「愛宕さんの胸も揉んだのかしら?」 「いやそういう意味で言ったんじゃない」 嫉妬深い大井の地雷を踏んだかもしれない。 この苦しい状況から抜け出すべく、自分は素早く手を退かせ思わず早口でまくし立てた。 触ってみて改めて大井も愛宕ほどではないが中々の大きさだと分かる。 それと、大井にも言った通り愛宕のタンクを触るどころか、揉んだという事実はないので誤解しないでほしい。 「過剰なスキンシップはお前にしかやらないよ」 「……ふふっ、二十発撃ちますよ?」 お馴染みの警告台詞を使う――注釈しておくと、秘書の執務席に座るため艤装は全て外されている――が、その口調はいつもの柔らかいものだった。 冷えた空気も冬の寒空へ帰っていったのか呼吸しやすいものへと戻る。 一旦落として上げる、とでも言うのか、 自分の精神は大井の小さく笑ったような声もあってすっかり緩みきり、再びタンクに手を伸ばした。 先よりもスキンシップ度高めで。 「あっ」 「うーん、確かにこの大きさだと肩に来そうだな」 「ちょっ、提督、手つき……っあ、まだお昼、あんッ」 「何食ったらこうなったんだー?」 「知らな……いやっ、ぁ、んん……」 「提督ー……あ」 ノックもなしに入って来られては取り繕うこともできず、タンクを揉まれる大井、揉む自分、 そして扉を開けた北上が固まり、再び執務室は妙な静けさに包まれる。 閉めた窓のさらに遠くの工廠から喧しそうな音が僅かに聞こえ、自分を少しのあいだだけ現実逃避させてくれた。 今日も中々に寒い。 インテリア重視で設置したダルマストーブは管理に手間がかかるが、流石に火を起こすべきだろうな。 ついでにスルメや餅でも焼いてしまえば割に合うだろう。さて。 まだ日は沈んでいないのでこのまま夜戦というか夜伽に突入するつもりはなかったが、 他の艦に見られてはあまり良くないことには変わりないわけで。 見られた相手が北上ならまだよかったかもしれないが、これが例えば金剛だったりしたらどうなっていただろう。 いや、金剛だったらノックはしていた。ノックをしない艦はいないわけではないが少ないので油断してしまったのだ。 「あー……北上、これはな」 「……やっぱりデキてたんだね、大井っち」 「きっ北上さん!!」 急に椅子から立ち上がったので手を退ける。 平手の一つでも飛んでくるかと身構えたがそんなことはなかった。 「あっあのね、これはそのっ――」 どうやら自分以上に動揺しているのか手をわたわたよく分からない動きをさせるだけで弁解はできそうにない。 しかしこちらもパッと都合のいい弁解の言葉が浮かばない。 イレギュラーにはすぐに対処できなければ戦場の艦娘は死ぬというのに。 「あーいいって恥ずかしがらなくても、これからはノックするよ。あたしは後でまた来るからごめんねー」 まずどう助け舟を出すか悩む時間も与えられないままに、ニヤつかせた顔で北上は気を遣って退出していった。 とりあえずノックは至極当然の行動だとツッコミたい。 扉が閉まる音を最後に残るは、嵐が去った後の静けさと、呆然と立ちんぼする大井と自分。 「……提督、演習の準備しましょう」 「……そうだな」 悪戯心を二度も叩かれては流石に起き上がってこない。 意気消沈と少しの罪悪感を胸に、次の演習の相手艦隊の情報が書かれた文書を確認しに行く。 珈琲は冷めていた。デジャヴ。 午後の演習も勝てた。 破損した艦は上から支給される演習用の高速修復材と資源を使って即刻修復される。 大井が工廠で修復を受けている僅かな時間に被弾せずに済んだ北上が声をかけてきた。 「提督ー」 「なんだ」 「昨日大井っちとえっちした?」 「ブッ」 呑気な顔で何を言い出すんだ!? あまり鋭いイメージのない北上からダイレクトにそんなことを当てられるとは思わなかった。 北上からすれば演習前に大井のタンクを揉んでいたところしか手がかりはないはずなのに。 「……提督。そのリアクションは古典的だよ」 「うるさいっ」 「で、やったの? やってないの?」 元々北上にならあまり明かすことに抵抗はなかったし、興味津々の北上に気圧された自分はポツリと漏らした。 「……やった」 「おっ、昨日で何回目?」 「……三回目かな」 「あれ? 意外と少ないな」 なんだその反応は。 話を聞くと、大井が夜中に部屋を抜け出すところを度々確認しており、 提督、つまり私の様子も最近変わったように見えたのでそのような推測に至ったのだという。 そこで自分は大井が私のためを思って度々工廠を訪れていたということを話した。 「へぇー、提督も隅に置けないね~」 「しかし、大井はともかく私はそんなに分かり易かったか?」 「うん。提督、スキンシップはするけどあっさりしたのばっかりだから本気で手を出そうとしてるようには見えなくてさ。 硬派だと思ってたから分かり易いんだよ。白い画用紙に絵の具で点をつけた感じにね」 なるほど、と、ここで大井が戻ってきた。 小破した大井の服や艤装は綺麗に元通りになっている。 「北上さん、何を話してたの?」 「んー? 大井っちとのえっち気持ちよかったかなって話」 「!?」 ハリケーン北上の一言で大井の顔が瞬時に赤く染まった。湯気でも出ていそうだ。 「ちょっ北上――」 「提督言ったんですか!?」 「うおっ」 顔は赤くしたまま少し怒った顔で自分の服に掴みかかってきた。上目遣いで睨まれる。 勢いが強くて少し後ずさりした。 「あははっ、じゃーねー」 またも取り残される、軍服を掴む大井と掴まれる自分。 しかしここは隅っこながらも工廠なのでそれなりにうるさい。 だから先までの会話が他の者に聞かれていることはないと思うが……。 「もーっ! なんで言っちゃうのよー!」 数秒の硬直の末再起動した大井に突然揺さぶられる。 暴れる視界の中どうにか捉えた大井は少し涙目になっていて、割合可愛かった。 …………………… ………… …… 端から、というより主に工廠妖精から見れば巷で言われる『バカップル』にしか見えなかっただろう寸劇の後、 しばらくはつーんと素っ気なくする大井に自分が泣きを入れる羽目となった。 手を合わせて頭を下げる。 「すまん! そこまで恥ずかしがると思わなかったんだ。 今度一緒に出かけて何か欲しいものでもあれば買ってあげよう。 それで許してくれないか」 なにぶん女性の扱い方など素人なので、 言い方を悪くすれば好きな物で釣って機嫌を直してもらうしか思いつかない。 恥を知らず想い人との夜伽の話を人に喋ったり想い人を物で釣ったりと迷走しているな自分は……。 そっぽを向いていた大井がゆっくりこっちを向いてくれた。 「……提督は、今夜もここにいますよね?」 「うん? 確かにいるが夜に出かけ――」 少し思い至るのが遅かったな。 それでも昨日行った夜戦の事が頭になかったら察することのできない朴念仁に成り切るところだった。 思い至ると同時に唇に当てられるほっそりとした人差し指。 「外出しないでください」 「……ああ」 「……それで手を打ちます」 短い肯定だけで顔付きが優しいものへと変わった。 それは普段の顔付きとも少し違う、嬉しさと恥ずかしさを織り交ぜたようで、不覚にも心臓が跳ねた。 大井は離した指を自身の同じところに持っていく。 やはり……そういうことなのか。 明日も北上にからかわれないといいがな。 「提督……っあ……」 「なんだ」 時は更に進み深夜。 大井はベッドに腰掛ける自分の足の間に腰掛け、後ろからタンクを好きなようにされ、縮こまっている。 昼のセクハラのおふざけ気分とは違い、今の自分は至って真剣だ。 静かな情欲が一周回って自分を真剣にさせているのだ。 「ん……や、やっぱり、愛宕さんくらい、あっ、大きい方が、いいん、ですか? っく……」 「胸で選んだんじゃないんだから、大井はこのままでいいんだよ」 「そう……ですかっ……」 昼の戯れで何気無く吐いた台詞を未だに気にしているようだ。 大井のそれは愛宕に及ばないまでもそこそこ、いや結構な大きさだ。触り心地も、服越しでも瑞々しく柔らかいのが分かる。 「て、提督……胸弄るのもいいけど……また、抱きしめてくれます……?」 「……」 出た。甘えたがる大井。 さっきから何度か言われる度にやってあげているのだがまだ足りないらしい。 タンクから手を離し、腕とタンクを包み込むように柔らかい体を抱く。 「はあっ……」 ある程度力を込めて抱きしめられた大井は息を吐き出した。 首筋に顔を近づけて深呼吸してみる。 やはり香水か何かの匂いがするわけでもないのに、癖になりそうだ。 鼻息を当てる度にビクつかせる反応が面白いのもそうだし、 大井の空気を肺に取り入れているという少し変態じみた自分の勝手な妄想もある。 大井も呼吸の間隔が長くなってきた。 またずっと密着していることもあって寒さが和らいできている気もする。 密着部分が体温で温まってきたのか? 体温そのものが上昇してきたのか? 「あの……」 上昇しているのが体温だけではないのも分かっている。 自分のモノには欲望に忠実になった血液が集まり、 ウィンナーの出来損ないから魚雷へと変化を遂げようとしているのだが、大井の尻肉に阻害されていて最早痛い。 「……私がしてあげます」 そう言うので腕を離し解放すると、ゆっくり腰を持ち上げていく。 邪魔だったものが遠ざかるにつれ、ある程度までは魚雷が天を仰いだ。 しかしこれだけではまだ不完全である。 ズボンの股間部に出現した山がそれを表している。 振り返った大井はそれを見るや足の間に跪き、山のファスナーを降ろし、できた火口に手を突っ込みまさぐる。 ひんやりとした手で握られ、外に引っ張り出された。 「あ……、昨日出したのに……」 感嘆の言葉をもらうが、一日も経てばそれなりに回復はするので何も不思議なことではない。 ちなみに聞いた話によると、精液は三日分まで溜められるらしいので満タンではないかもしれない。昨日で出し切っていればの話だが。 見つめるのも程々に愛撫を始めた。 これについては既に二回させられているので口出しする必要はなさそうだ。 この行為以外にも自分が大井に口出しする機会が果たしてあったかという疑問はさておき。 「ん……」 俯いた口から潤滑油を垂らされた。 思えば大井が私のを口でするところを最初から見るのは初めてだった。 なので率直に感心した。 まだ魚雷の方から潤滑油が滲み出ていないうちは口内にある油を使うことで摩擦係数を適度まで落とし、 最初から高度な快楽を与えようというのだ。 早速大井の潤滑油に塗れ、動きが良くなった魚雷を、手が汚れることなどお構いなしに扱き始めた。 ねち、くち、と、淫らな潤滑油による演奏が夜戦の始まりを告げる。 最初はそれを握る手で上下に擦られるだけだが、それだけでも充分な快感だ。 「……」 快感に抗おうと自分の顔には自然と力が入る一方、大井の少し赤い顔はそれをじっと見つめるだけ。 手は扱くだけでなく、落とした潤滑油をカリなどの伝い辛いところも含めて満遍なく塗り広げようと奔走する。 カリに指を這わせられた時は腰がビクついた。 ここまで細かい気の回しぶりに疑問が湧く。 「っ、お前、そういうの何処で覚えてきたんだ……」 「……演習の後の自由時間で聞く機会があるんです」 なるほど。 演習後は艦娘同士の情報交換を目的として相手艦隊と任意で交流する時間が設けられているのだが、その時に聞いているらしい。 というか、そういった情報を交換するための時間ではないのだが。 そして相手艦隊の艦娘がそういうことを知っているということはその艦達の提督は……。 いや、何も言うまい。 やがて扱いていた手が私の腿に添えられた。 「……んくっ、……ぅ……」 心の準備でもしたのか、喉が動いてから顔が近づく。小さな舌をそれに触れるべくおずおずと伸びてくる。 ぺちゃ、と触れると舌を動かした。 舌から逃れようと左へ右へ暴れる魚雷に唇を押し付け離すまいと追いかける。 暴れる魚雷を追うように大井の頭が左に向いたり右に向いたり、偶に上目遣いでこちらの顔を伺う光景は庇護欲を掻き立てられ、穏やかに頭を撫でた。 魚雷と大井の動きが止まる。 とりあえず二撫でのみで終えると口が離れた。 「今の、もっとしてください……」 そんなことをしているくせにその程度の望みを恥ずかしげな声で伝えるとは、 こちらの庇護欲を狙ってやっているんじゃないか? 大井が喜ぶならできることであれば何だってしてやる。これくらいで喜ぶならずっと撫でてやるさ。 大井が自分に尽くし、自分が大井に尽くす相互関係が生まれ、心が満たされていく。 早速茶髪の頭から毛先まで隈なくさらさらした手触りを楽しむ。 大井もそれで満足なのか、微笑んでから次のステップに踏み込んだ。 口を開いて目を瞑り、魚雷はぬめぬめと温かい口内に格納された。 根元までは届かないながらも一生懸命やってくれているのが伝わる。 伝えられる想いと快感が腰や手足を震わせる。 「んー……、んふ、ふっ」 撫でる手が頭からなんとか外れない程度の速度で、前後に動かされる。 咥えたことで明確な声を発することができなくなり、ちゅぷ、ちゅぷ、ちゅく、ぢゅ、といった空気混じりの水音だけが部屋に充満する。 「んぷ、んく、ちゅる、ん~……」 舌もしっかり動かし根元近くから頭までをちろちろ舐められている。 大井としては以前とやっていることは同じだろうが、自分としては仰向けで寝た状態でされた以前とはまた違った景色に映る。 そもそも以前された時はまだ心を交わせていなかった事もあるだろう。 その時の大井には焦りの様子がちらちら見え隠れしていたが、今はとても落ち着いた様子に見える。 頭を撫でる自分のこの手がそれに貢献できているのかもしれない。 「れい、ろ、く……、んくっ、きもひ、いい……?」 「くっ、喋るな……」 「むうっ……、ふっ、んっ、んん、ちゅく、んむっ」 「うっ、あ、はあっ……」 ぶっきらぼうに返してしまったがそれが気に食わなかったのか、先より速度を上げられる。 気持ちいいに決まってる。 その証拠に手がびりびりと震え、足腰ががくがくと留まらない。 少し腰が引けたが、すかさず大井の両手が腰に巻き付き離さない。 「あはっ、逃げないで、我慢しないで……」 優しい声で叱られる。 口を離した代わりに片手で擦られる。 しかし我慢しないでと言われても、自分は、もう―― 「ぐっ……」 「え?」 びゅるっ! 「きゃっ!? あむっ」 「くはッ!!」 びゅくっ! びゅっ! びゅっ、びゅる…… 魚雷は暴発し、白い油が一発大井の頬に直撃、以降はすぐに咥え直した大井の口内で無事(?)処理された。 手はもうちゃんと頭を撫でてはいなかった。 頭を掴んで押し付けてしまう衝動を抑えていてそれどころではなかったのだ。 「う……ん……んん、んく、ん、ぐっ……」 口内に撒かれたものを、目を瞑って眉を顰めた苦い顔で少しずつ嚥下していっている。 こうして自分の種子が大井に飲み込まれているのだと脳裏で反芻すると、背筋がぞくぞくと震える。 この顔を見るのはこれで三回目だが、ふと、もしかすると自分が知らないだけで、 実際にはこういうことを三回以上はされていたんじゃないだろうかとの考えが浮かぶ。 寝込みを襲われ自分のモノを口で弄ばれた挙句射精しても目が覚めないほど神経は図太くないつもりだが……。 「はーっ……、はー……」 大きく息を吐きつつ頭を撫でる事を再開する。 大井は砲に密着させていた唇を広げ、歯が砲に当たってしまわぬようゆっくりと口を離していった。 荒い呼吸のためか口は完全には閉ざさずに少し開けておき、ぼんやりと惚けた顔で頬に着弾した白いものを指でつまみ取る。 それを目の前に持っていき何を思ったか、それがついている親指と人差し指の腹をくっつけたり離したり。 指と指の間で餅のようにびよびよと伸び、千切れることはない。 大井は、そうして私の種子を弄ぶ。 「……」 「……面白いか? それ」 「……よく見るのは初めてですから……」 それがどんなものか確認せずに今まで飲み込んできたというなら、それは勇気の無駄遣いだと言おう。 少し呆れていると、大井は一頻り観察してもう充分だと判断したのか、その指を口に咥えた。 ちゅる、と指が口から出されたとき、指に付着していたはずの白いものは消え失せていた。 そしてやはり苦そうな顔。 懸命に体内に収めようとするその様を、自分は終わるまで黙って見据えてから、問いかける。 「……なあ、私が大井とこういうことをするのって三回目か?」 「……そうですよ?」 大井は質問の意図が分からない、と言った様子だったが、自分はこれで一つ疑問を解消できた。 私も人並みに繊細さは持ち合わせていたようだ。 そして大井はこの鎮守府で生まれ育ったので、他の男は、という質問はあり得ない。 するとやはり、こういったことは決して慣れているわけではないのだ。 予習だけしていれば大丈夫、というものではないだろう。 「無理して飲まなくてもいいのに」 純潔を散らせた夕べに伝えたように、艦娘として華々しく活躍し、目の届くところにいてくれればそれで満足なのだ。 自分でさえ口にしたいと思わない精液が飲めなかったくらいで嫌いになったりはしないし、 むしろ無理強いさせているようでこちらが不安になる。 しかし大井はこちらの心配などいらないと言うようにこう返した。 「……でも、やっぱり好きな人のだから、ちゃんと受け止めたいんです」 このとき、自分ははっと感動を覚えた。 提督をやっていてなんだかんだ自分について来てくれる艦娘はそこそこいるが、大井は最早特別だ。 私のために体を捧げ、嫌だと思うことも受け入れてくれる。 こんなことをできる人はそうそういまい。 贔屓はしてはいけないことなのに、今ばかりは他の艦娘のことなど忘れて大井のことしか考えられなくなる。 目の届くところにいてくれれば満足と言ったな。ありゃ嘘だ。今嘘になった。 目の届くところでなく、互いに目を合わせられるような、そしていざというときすぐ寄り添えるようなところにいてくれないと駄目だ。 「……提督?」 大井が黙り込んだ私に問いかけてくるが、少し待って欲しい。 今自分の内側からこみ上げてくる熱いものをどうやって発散すべきか頭の中で軍法会議を執り行っているところなのだ。 そのあいだ目の水門を閉じて零れ落ちそうになるものを必死に止める自分の顔は、大井にはどんな風に見えているのだろうな。 水門を閉じているので大井がどんな顔を、反応をしているのかは分からない。 いつの間にか頭を撫でる手を止めてしまっていたが、今は自分のことで精一杯なので許して欲しい。 唇も震え始めたので閉じている口に力を入れてそれを抑えたと同時、大井の頭が不意に上へ上がっていった。 大井の頭に乗せていた自分の手が滑り落ちる。 一体どうしたのかと門を開くと、視界はぼんやりしていてよく分からなかった。 それでも一秒二秒ほどで何とか晴れたとき視界に大井の顔はなく、あるのはクリーム色を基調とした装甲に覆われた二つのタンク。 それがどんどん大きくなって次第に視界を暗くしていき、ぴと、と自分の顔が二つのタンクの間に収められたのが分かった。 自分の頭はふわりとした腕に包まれ、やんわりと柔らかい体に押し付けられる。 「……何が悲しいんですか?」 そう問いかける声はとても優しい。 それはまるで小さな子供でも宥めるかのような声で、大井の持つ「母性」というものを自分は今初めて見つけた。 ただ愛されていると改めて実感しただけで泣き出す子供みたいな自分は、抱かれたままふるふると軽く首を振ることしかできなかった。 そんなことで泣くなんて、大の大人が恥ずかしい。 自分は膝に置いた両拳と顔に力を入れて我慢するのに精一杯で、言葉で返す余裕はなかった。 「泣いて、いいんですよ。ここには私とあなたしかいないわ」 「提督」ではなく「あなた」と呼ばれることでその意味は強調される。 単にこの部屋には、という意味なのに、どうしてか「この世界に二人しかいない」という意味に聞こえる。 やはり言葉で伝えたいことができた自分は、涙なぞ目の前の布地に染みても構わない一心に固まった。 溢れ出る想いは大井と同じように背中へと自分の両腕を回させた。 「ありがとう……」 自分の声は想像以上に掠れて震えていて、正直聞こえているか怪しかった。 背中にやった腕や手も震えていて力が入らない。 「愛してる……」 この言葉を皮切りに水門を閉じたが、意味を成さなかった。 漏れ始めた水のことなど無視して、大井の体の温もりを感じることだけ考える。 大井は聞こえたのか聞こえていないのか頭を撫でてくれるだけだった。 聞こえていなかったら少し残念だ。 しかし聞こえていなかったのなら後で伝えればいいのだから、残念なのは少しだけ。 大の大人の割に中身は人肌恋しい子供だった自分はそれからしばらく涙を流した。 …………………… ………… …… 感動の雨が止み、萎んだ自分の下腹部が冷えてきてそういえば夜戦の途中だったことを思い出した。 少し勇気の要ることだが湿った空気にしてしまったまず自分が言葉を発しなければこの状態から動くことはできない。 背中に回した手でとんとんと軽く叩き、合図を送ると頭に巻きついた腕の力が抜けたので顔を上げる。 大井を見上げるのは新鮮だ。優しい眼差しをしている。さながら聖母のよう……は大袈裟か。 「このまま続けたいんだが、いいかな?」 大井は思い出したように一瞬はっとしつつも、優しい顔は崩さなかった。 「提督の好きにしてください」 こんな台詞、日が沈んでないと聞けないだろうな。 受け入れられたことが嬉しくて、遠慮なく大井のスカートの中に手を伸ばした。 いつも怪物と戦っているにしてはすべすべな太腿を撫で回す。小さく震わすも抵抗はされない。 内股の方を触ってみると意外なことに、すぐそこの魚雷発射管から出ただろう潤滑油が既に伝ってきていた。 驚きを隠しつつ管の方へ手を持っていく。 そこを覆うたった一枚のカバーはぐっしょりと湿っていた。でもそんなに熱くない。 自分のを口で愛撫している時に濡らし、自分が泣き出した時に少し鎮まったのかもしれない。 太腿と管のカバーを濡らしている潤滑油をなるたけ掬い取り、手についたそれを口で舐めとる。 「提督! 何して――」 「お前だって私のでやったろう?」 「そ、そうですけど……」 だから御相子だ。 舐めた潤滑油は少ししょっぱかった。 濡れ具合を確認して一度口に運んだだけだが、自分のソーセージもどきが再び魚雷へと改装されるには充分な材料だった。 大井の装甲を外しにかかる。 上着は中央を縦に走る深緑の帯の裏に隠されたボタンを下から外していき、一番上の襟の中を通る白いスカーフも解く。 男にとってスカーフなんてのは無縁な装飾品で――いや、これはただの言い訳だな。 とにかくスカーフの解き方でやや迷った。格好悪くてこっちが恥ずかしくなってくる。 それでも大井は自分の拙い手付きをやや緊張しているような目でじっと見守るだけで、口出しもしてこない。 手際が悪くも時間をかけて前を開けた。 やはりカバーがつけられていない大きなタンクが二つ姿を現した。 顔が緩まないようにと自然と力が入る。 恥ずかしいのを隠すように目を逸らす大井に問いかける。 「……ブラとか、しないのか?」 大井は目を合わせてくれた。 「……肉体が普通の人より強化されているのは知ってますよね?」 それは知っている。 実態がよく分かっていない敵でも砲撃に使ってくる弾は演習とは話が違い、殺傷することしか考えられていない実弾だ。 直径が小さかろうが普通の人間が食らったら即死だ。 「だからブラがなくても垂れたりはしないんですよ」 なるほど。 直接上着に擦れたりして痛かったりしないのかとも思うが、痛くないからカバーをしていないのだろう。 深く考えないことにする。 今世にある常識をもって疑問を解決へ導けないのならいくら考えたって分からない。 「私の胸がそんなに心配だったんですか?」 「……まあな」 「さっきから子供みたいですね」 「男はいくつになっても子供だ」 男はいくつになっても子供らしさを失うことはない。 いくつになってもあれよこれよと色々なものを欲しがる。 それでも大井本人も気にしなかった母性の象徴が垂れるか垂れないか気にするのは子供が過ぎるかもしれない。 うふふ、と面白げに生暖かい眼差しで見下ろす大井を無視して上着を完全に脱がし、スカートのホックに手をかけた。 母性の顔もそれまでで、スカートを下ろし下穿き一枚に仕立て上げた時にはまた女の顔に戻っている。 最後に濡れそぼって使い物になっていない魚雷発射管のカバーにも手をかけようとすると、 流石に恥ずかしさが勝ったのか自分より早くカバーに手をつけた。 色気のない真っ白――だがそれがいい――なカバーが下ろされ、 クリーム色の靴下も下ろされた。 そういえば靴下の存在を忘れていた。 少しの茂みに隠れる入り口を探す余裕も与えられずこちらへと歩み寄ってくる。 「あまりじろじろ見ちゃいけませんよ?」 そう言われても目を逸らすことはできない。なんたって産まれたままの姿を見るのは初めてなのだ。 どちらかといえば白い方の肌色が視界一面に広がる。 こうして見ると本当に普通の女の子のようだ。 もちろんこれは普通の人間でないと愛せないという意味ではない。 特に深い意味もなくそう思った。 「綺麗だな」 綺麗なものはそれがなんであろうと心奪われるだけだ。 自分は大井の裸体を見て感じたことをこの一言に込めた。 が、別に大井の体にもし傷痕があったとしても自分は大井の体を醜いとは感じなかっただろう。 痛々しい、とは思うかもしれないが、それはそれで庇護欲が湧くだけで嫌悪感は絶対に生まれない自信がある。 「あ……ありがとうございます」 大井は緊張していた顔を少し緩め、こちらと同じく短く返す。これ以上の言葉は不要だ。 ファスナーから顔を出しているだけの魚雷を一度引っ込め、ズボンのホックとベルトを外して下腹部を露出させられるくらいまで下ろす。 殆ど脱いでいない自分は大井にとってフェアでないだろうが、そんなことよりも自分は早く大井と一つになりたかった。 準備が整ったので大井の手を取り、やんわりとこちらへ引っ張る。 大井は私の膝に跨り肩に手を置いた。私は自分のモノを掴んで狙いを定める。 そして―― 「ん……ぁ、あ、あ!」 自分の魚雷は大井の発射管にとても容易く装填された。 昨日よりはすんなり入ったが締める力は緩んでいない。 自身の体重もかかっているのか、まだ挿れただけなのに少し目線上の大井は喉を見せて啼く。 「はあっ……」 「っ……、まだ痛むか?」 「い、いえ……、昨日ほどの痛みは……」 大井は体を震わせる。 一切の装甲をなくした状態だが、その体は熱く、寒さの心配は無用のようだ。 別に寒くて震えているわけではないことくらい分かる。 「痛くはないんです……お腹の中で提督のが、っん、ビクビク、して……苦しい……ふふ」 苦しいと言うのに笑っている。 女性の心理は自分には分からないが、今の大井を見てやめようとは甚だ思わなかった。 それどころか自身の腹を掌で愛おしげに撫でていてはこちらも我慢できないわけで……。 「あっ!!」 足に力を入れて腰を突き上げると、 ただでさえ大井の体重で入れるところまで入っている自分の魚雷はさらに中を抉ることとなり、 大井は強く息を吐いた。 「ちょ、提督いきなり、いぃっ!」 大井の健康的な体重がかかって速く動かすことはできないが、大井の感度は良好だ。 綺麗にくびれた腰を掴んでぐいぐいと押し付けてみる。 「あはぁっ……、くぅ……ん、や……あっ!」 今度は手を尻にやって持ち上げる。 魚雷の凸部分が内部を抉りながらずろろろろと外気に身を晒し、 潤滑油に塗れた魚雷を再び内部に収めるべくむんずと腰を掴み落とす。 「ふあっ!!」 深く楽しむために速度は求めない。その喘ぎに現れた艶を更に磨き上げるメンテナンスは慌てずに確実に……。 「くっ、……おおっ……」 「はあ……ぁー……」 ずん。 「あんッ!」 ずるう……。 「ぁぁぁああ……」 ずん! 「かはっ!!」 ズボン一枚を挟んで肉同士が軽くパンッと音を鳴らす。 まだこれからだというのに、肩に置かれた手から力でも抜けたかふらりと倒れこんできた。 まあこんなでも一応二回目だ。慣れていないのなら焦らず時間をかけて体をほぐすといい。 「はーっ、ふぅー……」 肩に顎を乗せて息を整えようとする大井の背中を片手間で撫でる。背中に広がるさらさらした後ろ髪も混じえて。 大井の肌は背中も滑らかですりすりしていた。 「はあ……提督も脱いでくださいっ」 やはり抗議されたか。 しかしそうやって目を合わせてまで言われても、右手は大井の腰に、左手は背中にやっていて手が空いていない。 ……生憎と空いていない。 しかし、ここで、我、妙案思い付くせり。 「脱がせてくれ」 「脱がせる、ですか?」 「そうだ」 「……私がやることに何の意味が」 「いいから」 「はぁ……」 大井はよく分からないといった具合に、面倒臭いボタンを一つ一つ解いていく。 これはこれで奉仕されているかのような演出だ。 間もなくして腕も袖から出され、真っ白で皺なく整えられた軍服はベッドに放られた。下着は流石に自分で脱ぐ。 「自分で脱げるじゃないですか」 別に脱げないとは一言も言ってない。 ぶつくさ言われながらも、日頃ほとんど鎮守府に篭って全く鍛えていない胸板に豊満なタンクが押し付けられた。 間の抜けたやり取りをしながらも、先ほどから繋がったまま潤滑油は追加され続け、 魚雷の威力を最大限まで引き出す準備が着々と進められていた。 抱きつかれ抱きとめて人肌を交換している状態で、ぐっと腰に力を入れ直した。 「……ぁ、あ、あっ! んっ、ん、ふぁっ!」 動きやすいよう小ぶりな尻を掴んでテンポよく発射管をほぐしていくと、 あまり時間も経たずに下からじゅぷじゅぷと音が聞こえてくる。 漏れた油がぱた、ぱた、と下腹部を中心として周りに飛び散る。 「ふっ、ん、ほら、聞こえるだろっ? 大井の中っ、もうぐちょぐちょだっ」 「んーっ、ん、うぅっ、てい、提督のがっ! ……大きい、から、ぁあっ!」 別に自分の魚雷が大きいのではなく、大井の発射管が小さいだけだと思う。 そういう謙遜する気持ちと、女から見れば至極どうでもいい男の誇りが認められて喜ばしい気持ちが葛藤する。 これまた行為中にどうでもいい議題で開かれた頭の中の軍法会議は、一瞬で後者が可決され気分は高揚。 もっと聞かせてやろうなどと調子づいた自分は、魚雷の更なる性能向上を図る。 発射管の中で魚雷は早く攻撃を放ちたいと疼く。 「んっ! んっ! んん!」 胸板に押し付けられたタンクは熱暴走を起こしていて、部屋の中にも居座ろうとする冬将軍を物ともしない。 先端部なんか自己主張がひどくて形がよく分かる。 一切の装甲を解いた大井の体が熱いのだ。こちらまでその熱に犯される。 密閉された発射管の中なんて熱が篭るから下腹部周りがむれっとする。 軽口とか言葉攻めとかをしている余裕なんかない。 全ての感覚を自分の中心部に集めてひたすらに欲の行き場を求めるだけ。 くらくらしてきて自分の顔の横から発せられる艶めかしい喘ぎさえも聞こえなくなりそうだ。 うるさいくらいの喘ぎよりも自分の心臓の音のほうがうるさい。 気分も、心拍数も、貪欲も、昇り詰めていく。 「出、そ、っ……」 最低限残しておいた理性をもって、一応知らせておいたほうが何かといいだろうと考えたのはいいが、 体が強張ってちゃんとした言葉にならなかった。 しかし聞こえていたらしく、すぐにその啼き声に心の底から叫ぶような懇願を乗せられ、 結果、ずん! と大井の体を勢いをつけて落とし込み、最奥で魚雷はスクリュー全開で炸裂することとなる。 「中にっ! 下さ、くらさいっ! 提督っ! ていとくぅっ!!」 びゅっ! びゅるっ! びゅくびゅくっ!! 「ふぁぁぁああああ……!!」 自分と大井の体は震わせて共鳴しあった。 射精が終わり、自分は大井を抱きしめたままゆっくりとベッドに倒れこんだ。 大井の体重がのし掛かるがその苦しささえも心地よく感じる。 「抜かないで、ください……このまま……」 抜こうとしてないし、体を動かしたくないし、何より大井と同じく行為の余韻をまだ感じていたかった。 …………………… ………… …… 体を重ね合ったまま、互いの息が整うまでに短くとも五分以上は要したと思う。 昨日と違い服を纏わない状態で――自分はズボンだけ履いているが―― 一枚の布団を被った。 寒くないかと問いても提督がいるから大丈夫と言う。畜生、一々つぼをついてくるな、こいつは。 「提督……私も愛しているわ」 「どうした、急に」 「さっき言われた時、言いそびれてしまいました」 「聞こえていたのか?」 「提督の声を聞き漏らすはずがないもの」 ソナーか何かをつけているわけでもないのに何を根拠に、とは返せなかった。 あの時は息が詰まるほど嬉しくて苦しくて、絞り出すように発したので聞こえていないだろうと本気で思っていたのに。 「提督が泣き出すなんて初めて見ましたから」 「……艦娘の前で泣いたのは今日が初めてだね」 「今日の提督、本当に子供みたいでした」 クスクスと笑い始めた。からかわれているこの状況から機転を効かせ話題をすり替える。 「……お前もここに来た頃とはまるで正反対だ、あの時はぐちぐち言われて結構……」 「そ、それは……」 ほら、狼狽え始めた。 こいつも時が経つにつれ初期からは想像できない面も見せるようになったものだ。 「男性にはあまり素を出したくない、って考えるのが私ですから……、今提督にそうは思っていませんけど、今更態度も変え辛くて」 「……」 「……変えたほうがいいですか?」 なんだ。大井はそんな悩みを持っていたのか。 しかし、自分は大井の内面は充分、とまでは行かなくとも半分くらいは理解しているつもりだ。 答えは聞かれる前から決まっている。 「無理して変えなくていい。私は今の大井も好きだし、本当は優しい いい子なのも分かっているから」 そう言って儚げに見つめる大井の頭を撫でることで不安を拭おうと心掛けた。 自分は時が経つにつれ、一見キツそうな性格の中から優しい面が垣間見られるところに魅力を感じていくようになったのだ。 そもそも大井は別に人をいびるのが大好きとかいう性格の悪い子じゃない。 あくまでも大井は歯に衣着せぬ一面もあるだけに過ぎず、こうして気にしすぎなまでの気配りもできる一面だってある。 他提督から聞いた話ではこれを確かギャップ萌えとか言うんだったか。 「まあ、大井がどうしても変えたいなら止めはしないが……」 「分かりました、このままで行きます」 なんだよ。その掌の返しようは。 「やっぱり私は、今の関係が一番気に入ってますから。山や谷がないと飽きちゃいます」 「……私もそう思うよ」 顔が緩んで、笑みが零れる。 やはり大井も同じ考えだったのだ。 悪友のように言葉遊びで互いを突っつき合う関係もよし、愛を求め合う関係もよし、自分はその両方の関係が好きだ。 どちらも欠けてほしくない。 「……提督」 「うん」 「ここまで育ててくれて、感謝しているわ。これからも、ずっと……」 そうだ。大井に惹かれていくようになったのは最終的な改装を施してからだ。それも随分前の話。 過保護な提督ならば戦闘に行かせずに隠居させるかもしれない。 しかし限界まで練度を極めた大井は現在最高の戦力だし、大井も艦娘としての誇りを持っているはず。 ならば最前線まで送り出して、華々しく活躍させてやるのが提督の役目。 別に敵陣地へ特攻を仕掛けろなどと言っているわけではない。 伸び伸びとやりたいことをやらせてやるが、必ず帰って来いということだ。 色々言いたいことはあるが、自分は大井を抱き寄せるだけの返事にそれらを込めた。 大井もそれ以上は何も言わなかったし、何も求めては来なかった。 そして、泥のように眠りについた。 …………………… ………… …… 流石にほぼ全裸で布団一枚は寒く、幸か不幸か寝過ごすようなことにはならずに済んだ。 装甲を着込んだ大井が起こしてくれたおかげもあるがさておき。 開き直って二人で顔ぶれの少ない――いずれも珍しいものを見たような反応をされた――朝早くの食堂に顔を出し、単横陣でカウンターに座る。 しかしやけににっこりとした間宮にお勧めの一膳を出すと言われたので甘んじ、出てきたものを見て固まった。 大井も同じものを出されて顔を引きつらせている。 「あ、あの……何かな、これは」 食べ物は聞いて判断してないで何でも食べろと両親から教育されたが、 それでも、この四角い箱に盛られた主食料理を指差して聞いてみる。 他には―― 「はい。鰻重、滑子のお味噌汁、餃子、秋葵と若布の御浸しと、北上さんの計らいでお二人のために特別に考案した精力料理でございます」 「それはまた朝から濃いものを……」 あれこれがどういう料理だなんてそんな眩しい笑顔で説明されなくても見れば分かる。 ちらと横目で見ると、大井は寒いはずの冬の朝どきに顔から火どころか炎上している。 「それと……夕べも、お楽しみでしたね?」 おのれ北上。しばらくの間アイスクリン供給過多だ。 「だ、ダメです! 提督の自業自得ですっ!」 むう。大井に言われちゃ仕方が無い。 大井に免じて大目に見てやった優しい提督に感謝するんだな北上め。 こちらを見る間宮の生暖かい眼差しと生暖かい問いかけを流し、自分は鰻重にかけるための山芋のとろろを追加で注文した。 大井、いつまでも顔赤くしていないでさっさと食べなさい。今日も第一艦隊の旗艦をしてもらうんだからね。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/172.html
12月も半ばを過ぎ寒い日が続く。 今日の洗濯当番は長門だったらしい。 PUKAPUKAエプロンをつけて洗濯物を干しているのだが…… 「なんだあれは……」 なにやらどでかい靴下が干されている。 少なくとも人間が履けるサイズではない。 しかも片方だけだしどう見ても不自然だ。 しばらく靴下を見ながら首をひねっていると洗濯物を一通り干し終わった長門が近づいてきた。 「どうしたのだ提督、何か用か?」 「いや、用というほどのものでもないんだが……あのでかい靴下は誰のだ?」 別に隠すようなことでもないので好奇心半分に聞いてみる。 「ああ、あれは私のだ」 「何!? いや、待て。どう見てもサイズが大きすぎるだろう!?」 「フッ…早とちりをするな。履く為に持っているわけではない」 「じゃあなんだ?」 「もうすぐクリスマスだからな、西欧の風習とは言え楽しみなのだ」 「はぁ……」 クリスマスとでかい靴下と長門がイマイチうまく組合わさらない。 「そして!」 ビシッとこちらに指を突きつける長門。 「クリスマスといえばサンタさんの贈り物! あれはそのために私が一年をかけて縫ったものだ!!」 「………」 言葉を失いつつも靴下の方に目を凝らしてみる。 「ま、まぁ慣れない事をしたので多少不格好ではあるが完成時にはかなり汚れていたのでな。 そこで一旦洗濯したというわけだ!」 言われてみると縫い目の幅やら縫い方がかなりめちゃくちゃで 靴下というわかりやすい形でなければなんだかわからない出来である。 「つ、つまり…あれはプレゼントをもらう用のモノと?」 「その通りだ! 今までも貰えていたがやはりサイズ的に限界があったのでな!」 思わず頭を抱えそうになる。 大和ほどではないが長いあいだ箱入り娘状態で過ごしていた彼女は 戦場でこそ勇猛なもののどこか世間ずれしているところがある。 おおかた今までは陸奥あたりがプレゼントを入れてやっていたのだろう。 「これだけ大きければいいものがもらえるに違いない。提督もそう思うだろう?」 「お……おう……」 「どうした?覇気がないな! サンタさんは元気な子にしていなければ来てはくれないぞ! ハッハッハ!」 「そ、そうだな」 たぶん貰っていない(買っていない)陸奥あたりのことを言っているのだろう。 乙女()の夢を壊すのも悪いと思い、提督はそそくさとその場をあとにするのであった。 そしてクリスマス当日の夜になった。 「ん? どうした陸奥」 秘書官をしていた陸奥が突然立ち上がり頭を抱えたのだ。 「ど、どうしよう……」 「何かあったのか?」 「え、いや…その……あーっ、もう、い、一応秘密にしてね?」 しどろもどろになりながら説明をはじめる陸奥。 「あー……つまり長門へのクリスマスプレゼントを買い忘れたと」 「あら、驚かないのね?」 「この間でかい靴下干してるの見たからな」 「そうなのよ……今年は特に楽しみにしてたから。でも最近忙しくてつい忘れちゃってて」 「しかしなにか買いに行くにしてももう時間が時間だしなぁ……」 「そうなのよね……ね、ねぇ提督なんでもいいからプレゼントにできそうなもの持ってないかしら?」 「無茶ぶりをするな、とはいえまぁ最近秘書官として突き合わせてたというのも原因だしなぁ……」 「お、お願いだから」 「とりあえず探してみる、中元やら歳暮の残りやらを探せばなんか出てくるだろう」 「ありがとう、助かるわ……って、あ」 「そういえばお前これから遠征だったか、こんな時期にすまんとは思うが」 「そうなのよね……プレゼント届けるのもお願いしていいかしら?」 「それはいいが……誰かに見つかって妙な誤解をされると困るんだが」 「下手にほかの娘に頼んで話が広まっちゃっても困るし……お願い」 「はぁ……了解。何とかしておくよ」 そう言うと陸奥は遠征の準備のため慌ただしく部屋を出ていった。 「とはいったもののクリスマスプレゼントにふさわしいものねぇ……」 中元や歳暮等で残っているものといえばせいぜいが酒とかそんなものである。 「さすがサンタのプレゼントには苦しいよなぁ……」 しかし陸奥からいつもどんなものを送っているかを聞いていなかったために 何を送ればいいのか見当がつかない。 本人に聞こうかとも思ったが棚をあさっているあいだに就寝時間が過ぎていた。 あれで長門は早寝早起きだ、既に寝てしまっているだろう。 「ああもうこれでいいか」 あの靴下にはとても見合わないが無いよりはいいだろう。 とりあえず一番高そうな酒とツマミのセットを持って長門の部屋に用心深く進む。 なんとか誰にも見つからず長門の部屋に到着し、軽くノックする。 全く反応はない。 既に長門は熟睡しているようだ。 普段なら鍵をかけているはずだが陸奥曰く「サンタさんが入ってこれなくなると困るから鍵は空いてるはずよ」 との言葉通りノブを回すとあっさりとドアが開いた。 ドアを閉め、ソロソロと忍び足で侵入する。 薄暗い中目を凝らすと眠っている長門の横に例の靴下が置いてあるのがわかった。 (さて、とりあえずこれ置いてさっさと帰るか) 靴下に潜り込み奥にプレゼントを置こうとしたのだが…… (ちょっ、なんだこれ、い、糸が絡みついて進めん! というか戻れん!!) 荒く複雑な裁縫のせいで魔境と化していた靴下に捉えられ、身動きが取れなくなってしまった。 (ど、どういう縫い方してるんだって、うわっ!) ガン!! もがいていると足を滑らせて膝を床に強く打ちつけてしまった。 同時に傍の長門から起き上がる気配がする。 (ヤ、ヤバイ、どうしよう) 「な、何者だ!? って靴下が動いてるだとっ!?」 (か、完全に気づかれた!) 同時にグイっと靴下が持ち上げられる。 「ま、まさか……」 ゴクリと唾を飲み込む。 「サンタさんかっ!?」 ズコーッ!! 思わず持ち上げられた靴下の中で盛大にずっこける。 ビリッ… (げ!) ビリビリビリドサー! 「いってぇ!」 ズッコケたところの縫い方が甘かったのか靴下の下が空き、プレゼントを中に残したまま床に放りだされてしまった。 「て、提督だと!?」 (か、完全にバレた! すまん陸奥!!) 「ま、まさか……そんな……」 「な、長門……そのだな……」 無駄とは分かりつつも経緯の説明をし、夢を壊した罰は受け入れよう。 そう思って口を開きかけ…… 「こ、今年のプレゼントは提督だったのか……」 硬直 (え、なんでそうなんの!? というか俺がプレゼントって(意味深)なことになってしまうじゃないか!?) どう説明をしようかと長門を見ると珍しく顔を赤くし、手足をもじもじさせている。可愛い。 「そ、その……私は初めてなのだ……や、優しくして欲しい」 「あ、ああ……(い、いいのか?)」 しかしここでやめてしまっては色々な意味で酷い事になるだろう。 なにより目の前の長門は普段の凛々しさなどどこへやら、不安げな中に期待を込めた視線を送ってきてる。可愛い。 長門の腰に手を回しゆっくりと抱き寄せる。 「あっ……」 抵抗することなく簡単にこちらの胸に収まってしまう長門。 そして顔を近づけると察したのか上を向き目を瞑る。 そのまま長門の唇を奪うと柔らかい感触が脳に刻まれる。 唇を離すと「これが……接吻というものか。悪くない、な」 うっとりとした顔でそうつぶやいた。 そっと長門の体を布団に横たえる。 横になった体をほぐすようにゆっくりと撫でていく。 「あ……んっ」 見た目通り引き締まっているがそれでもやはり柔らかい女の肌を堪能したあと、さらに柔らかい箇所へ手を伸ばす。 二つの双丘がムニムニと面白いように形を変える。 その刺激に耐えるように顔を赤らめながらも口をギュっと結ぶ彼女に再び唇を合わせる。 「ンンッ!」 突然の事にびっくりしたのか長門の体がビクリと跳ね、同時に揉まれている箇所からの反応が強くなる。 そっと上着をまくると形の良い乳房が露わになり、吸い寄せられるように舌がその先端へと向かってゆく。 チュッチュルルッレロレロレロチュゥゥゥー 「ふぁっ!? て、提督!? そ、そこを吸っても乳はでな……あんっ!」 初めて味わう未知の感覚に体を震わせる長門。 そんな彼女を昂ぶらせるように手でもうひとつの乳房に手を伸ばし、絞り上げ先端をつまむ。 コリコリと乳首を甘噛みしてやると長門の口から甘い吐息が漏れるようになってきた。 そろそろ大丈夫か、とそっと両足の付け根に手を伸ばす。 胸への刺激に夢中になっている長門は気づかれずにそこに手を這わせることに成功する。 「んくっ……あぁっ!? て、提督、そこは!」 返答を待たずに既に湿り気を帯びているそこを下着の上から何度もなぞるとどんどん湿り気が強くなってきた。 下着をずらし直接触れてやると既にヌルヌルとした愛液が割れ目の中から溢れ出てきていた。 指で押し広げながら中指の腹で擦ってやると普段の彼女からは聞くことのできない嬌声が耳に飛び込む。 「あっ…ダ、ダメだ……提督、そ、そこを触られると私は……私はっ!」 その反応がたまらず、今度は頭の位置をそこまで下げ、直接舌を這わせる。 さすがにびっくりした長門が頭を押して離そうとするが、舌の触れる方が早くその刺激で手に力が入っていない。 「や……ぁ……提督……そこは……汚……あぁっ!!」 ピチャピチャとわざと音を立てて舐めてやるとただでさえ赤くなっている長門の体が羞恥でさらに赤くなる。 そして同時に秘裂の奥からはどんどん蜜があふれてくる。 それを舌ですくい上げ、音を立てて飲み干す。 ジュル、ジュルルルル 「は、恥ずかし……やっ……て、提督! それ以上されたら……や、やめ……あ、あぁぁぁぁ!!」 舌で皮をむいたクリトリスを強く吸い上げてやると体をビクビクと跳ねさせながら長門が絶頂を迎えた。 愛液が秘裂より吹き出し提督の顔を汚す。 快楽の余韻に浸っている長門をみてゴクリと喉を鳴らしつつ、カチャカチャとズボンを脱ぎこれ以上ないほど勃起したそれを取り出す。 「す、すごい……これが殿方の性器か……」 「長門……いいか……?」 最後にもう一度だけ確認すると長門は微笑みながら頷いた。 十分に濡れた割れ目に肉棒を押し当て、愛液をまぶしながら徐々に挿入していく。 「くっ…くううぅ!!」 さすがに痛みが勝るようだ、一旦動きを止め、長門の体が落ちつくのをまってからまた少しだけ進む。 この繰り返しで処女膜を破り、ようやく彼女の一番奥深くまで肉棒が差し込まれた。 「全部……入ったぞ……」 「はぁ……はぁ……不思議なものだな……痛みは感じるのに全く別の感触も感じる……」 そういう長門の体を愛撫しながら注意深くピストンを開始する。 最初はうめき声だった長門の声に徐々に甘いものが混じりつつある。 同時にきつかった中も分泌された愛液によってだんだん滑りが良くなってくる。 「長門……大丈夫か?」 「ああ……まだ少し痛むが……」 「ならゆっくりにしたほうがいいか」 「フッ、ビッグ7を侮るな。この程度の痛み道ということはないさ それに、その……激しくしてもらうほうがその……気持ちいい」 可愛い リクエストに応えるべく荒々しく奥につきこんでやると締りの良い膣がもっともっととでもいうように肉棒を締め付けてくる。 もともと長門を痛がらせないように我慢していたのでそろそろ限界に近い。 「クッ……長門、すまん。そろそろ限界だ!」 「あっあっ! 提督! 私も何か変な感じが来る! あっ! あぁぁぁぁぁぁ!!」 「グッ!!」 ドクン!! 長門の一番奥に叩き込んだ瞬間、我慢していた欲望が解き放たれ彼女の子宮を白濁液が満たしていく。 その感触を長門は体中を震わせながら受け止めていた。 そのまま眠ってしまった長門の体を拭き服を着せてやり、酒とつまみセットを持って提督は長門の部屋を出た。 下手なものを置いたままにしておくよりは後腐れがなくていいだろう。 そしてクリスマスの夜は静かに更けていった。 ───翌朝 「おお、陸奥か。遠征は成功だったようだな!」 「え、ええ。お陰様でね。と、ところで昨日サンタさんは来てくれたのかしら?」 もし失敗していたらどうしよう。 そう心配する陸奥の杞憂を吹き飛ばすように長門は豪快に笑った。 「ああ、サンタさんも粋なことをするものだな。最高のプレゼントだったぞ!」 「そ、そう。なら良かったわ」 一体何を渡したんだろう。 「ねぇ提督、姉さんったらすごく喜んでたけど結局何を渡したの?」 「すまん、ノーコメントで」 「?? まぁ問題なかったみたいだから別にいいけど」 釈然とはしなかったが姉が満足してるみたいだしいいか 無理に頼んだのは自分なのだからいちいち追求するような権利もない。 こうして今年のクリスマスの夜に何が起こったのかを知るのは幸いなことに二人だけの秘密となったのであった。
https://w.atwiki.jp/iitomo/pages/42.html
【エヴァ風】 【ガンダム風】 【銀英伝風】 【エヴァ風】 第壱話 アメリカ、襲来 第弐話 見知らぬ、海底 第参話 当たらない、爆撃 第四話 艦隊、逃げ出した後 第伍話 資源、海峡のむこうに 第六話 決戦、ハワイ沖 第七話 いいともの造りしもの 第八話 改長門、開発 第九話 瞬間、空母、重ねて 第拾話 アクアダイバー 第拾壱話 静止した戦艦の中で 第拾弐話 アルミの価値は 第拾参話 海水、侵水 第拾四話 いいとも、魂の指揮 第拾伍話 嘘と沈没 第拾六話 死に至る五十六、そして 第拾七話 四隻目の消耗品 第拾八話 特攻機の選択を 第拾九話 無能の戰い 第弐拾話 沈む人たち、墜ちる人たち 第弐拾壱話 無能戦艦、誕生 第弐拾弐話 せめて、軍隊らしく 第弐拾参話 涙 第弐拾四話 最後の開戦 第弐拾伍話 終わる戦時 第弐拾六話 戦艦の中心でいいともと叫んだけもの 劇場版 戦艦新生 劇場版 soly/赤紙を、君に 【ガンダム風】 1 いいとも中指並みに立つ 2 シクヨロディス破壊命令 3 敵の空母だけを叩け 4 レイテ脱出作戦 5 ワイハー突乳 6 PDK出撃す 7 無能スパイ1号脱出せよ 8 戦場は荒天 9 翔べ!ドピュドピュ 10 PDK散る 11 いいとも来い!!の阿斗 12 アメリカの脅威 13 最下位、バカよ・・・ 14 時間が止まりまくり 15 またロードかの島 16 フェラ出撃 17 フェラ脱走 18 灼熱のイイトモ艦隊 19 シクヨロディス特攻 20 死闘!トンフェラバトミントン 【銀英伝風】 日本提督伝説 主人公 イイトモ・カミキッター イイトモ艦隊の提督。通称・沈没提督。 相当の戦力を有していれば、したたかな損害を敵に与える最低限の能力を有するが、 ほぼ同等数の被害を自らも受けてしまうことから、艦隊沈没の名人と言われている。 彼の特徴は一度危機に瀕すると反撃や抵抗と言う言葉を頭から消し去りただ退却のみを指示するところにあり、 一部の上層部からは煙たがられている。 その一方、多数の将兵からは変な意味で慕われており兵卒からは『逃走のイイトモ』という異名も持つ。 彼が撤退を開始したときの戦艦の破壊率、損傷率、将兵の死亡率は0%という数字を誇っている。 進退極まるまで抵抗を続け、最期には玉砕する提督もおり、道具でしかない将兵の心情を考えるとわからなくもないが・・・。 また『絶壁のイイトモ』とも囁かれ、これはいつ日本海軍からクビを宣告されるか、というところからである。 艦隊旗艦はヤマトゥー。 主な台詞 「逃げろ逃げろ! 後ろから死神が鎌を振り下ろしてくるぞ!」 【1期】 第1話 深淵の闇の底で 第2話 東シナ海戦 第3話 イイトモ艦隊誕生 第4話 大日本帝国の残照 第5話 亡命者動乱 第6話 バラバラの意志 第7話 ハワイ攻略! 第8話 精鉄なる期間 第9話 黒船取得事件 第10話 いいともの戦い 第11話 空母退場 第12話 大日本帝国領侵攻 第13話 空襲来たりなば・・・ 第14話 植民地の解放 第15話 真珠湾海域会戦 第16話 定かたる漂流 第17話 神風の前 第18話 璃斑珠辰島の密約 第19話 イイトモ艦隊出動 第20話 流血の苦流 第21話 太平洋海域会戦、そして・・・ 第22話 無謀と正中 第23話 大日本帝国は倒れた 第24話 己がための勝利 第25話 運命の船室 第26話 海原、遠き地 【2期】 第27話 水深 第28話 少将 第29話 黒い一本のコード 第30話 失われた帆々 第31話 敗戦尋問会 第32話 作戦なき戦い 第33話 艦載対艦載 第34話 旗艦 第35話 決意と夜侵と 第36話 海鳴 第37話 陽底夕海 第38話 核は放たれた 第39話 地獄の旅立ち 第40話 焦土の大地・黒雨の空 第41話 作戦名『負け犬の遠吠え<ローザー・ハウリング>』 第42話 逃走曲への招待 第43話 空襲警報は鳴った 第44話 首都占領 第45話 看破至らず 第46話 イイトモ提督の夜行船隊 第47話 自由の海を求めて 第48話 八ッ首の竜 ~ヤマタオロチの決戦~ 第49話 傷が深くなるのは・・・ 第50話 連敗 第51話 日本海の死闘(前編) 第52話 日本海の死闘(後編) 第53話 流転 第54話 大統領ばんざい! 【3期】 第55話 裁判から再び幕が上がり・・・ 第56話 米国へ 第57話 暗殺未遂事件 第58話 砲門射 第59話 劣勢と撤退と敗北と 第60話 イイトモ捕らわる 第61話 悲劇への後退 第62話 血の流水戦艦 第63話 征地 第64話 戦火は終わりぬ 第65話 日の丸に背いて 第66話 星条旗の下に 第67話 『負け犬の遠吠え<ローザー・ハウリング>』ふたたび 第68話 オキ・ナワへ 第69話 ハワイ諸島奪取作戦 第70話 蕩児たちの支度 第71話 インドネシア海域の海戦(前編) 第72話 インドネシア海域の海戦(後編) 第73話 冬桜庭園の勅令 第74話 前途領圏 第75話 海動 第76話 特攻の前 第77話 風は海廊へ 第78話 春の渦 第79話 海廊の戦い(前編)~常敗と不勝と~ 第80話 海廊の戦い(中編)~懺悔峡~ 第81話 海廊の戦い(後編)~大撤退の終幕~ 第82話 イイトモ、還る 第83話 特攻の後 第84話 失墜の凱旋 第85話 戦と霊 第86話 海月の新政府 【4期】 第87話 時化の予感 第88話 孤島にて 第89話 夏の終わりの桜 第90話 迷狼 第91話 渤海 第92話 閏橋事件 第93話 逃路に駆けて 第94話 戦略的撤退は提督の職権 第95話 紺碧相撃つ! 第96話 海に生き・・・ 第97話 海に斃れ・・・ 第98話 終わりなき逃走曲 第99話 後退への助走 第100話 逃避ばんざい! 第101話 ウランへの誘い 第102話 敢えて敵を背に 第103話 エロティック・モザイク 第104話 平和へ、アルタ前経由 第105話 紺冥の大海 第106話 ヒイラギ艦炎上 第107話 蒼穹の海路<ターコイズ・アクアロード> 第108話 醜男は死を欲す 第109話 星条旗に光なし 第110話 スレ、見果てたり 【劇場版1作目】わが退くは門司の小海 【劇場版2作目】母なる戦いの終曲
https://w.atwiki.jp/zenkairowa/pages/86.html
「どこもかしこも派手に暴れているね」 垣根とともに主催の場から動き始めたキュゥべぇが語り掛ける。 魔法少女の決戦。 惹かれ合うグルメ細胞。 神と神の激突。 乱入者と乱入者の今期決戦。 そしてサイヤ人の争い。 会場に集められた人数も最初と比べると大分減り終盤の空気が漂い始めるバトルロワイアル。 大地は削れ、水が渇き、月が破壊された――何も傷を受けているのは人類だけではないらしい。 『神』が複数降臨している今、この世界に不可能など存在しない。 限界の果てに何があるか、それは神にも理解できないだろう。 「伝説の巨人まで持ち出すとはな……どうなっても知らねえからなアレイスター」 限界を超えた一人の人間名を垣根帝督、未現物質を操る学園都市の№2であり暗部組織のリーダー。 その力は会場内でも屈指の実力だが限界が存在しない今徐々に霞み始めており、全体の標準の高さが伺える。 現在彼らが目指しているのはサイヤ人の争い場所である。 「それにしてもニトロと妹達を置いてきてよかったのかい?」 「そうでもしねえと大量の巨人は誰が駆逐するんだ? ハルトは鎧と超大型の相手で忙しいし、フリーの奴がいるか?」 参加者は誰も知らないが現在会場には大量の巨人が押し寄せている。 イデオン発進時に囲っていた壁が崩れてしまったため巨人が大量に溢れ出したのだ。 そこでこれ以上対主催を減らさないためにも垣根は貴重な戦力を全て注ぎ込んだ。 全開となった己の能力を行使したのだからたかが巨人に負けることはないだろう。 しかし物量戦になれば勝利と言う結果は遠のくかもしれないが。 巨人の中でも特別な力を持った個体が流れ込んでいる。 その二体の巨人は更にプリキュアへと変身し更なる高みへと進化している。 彼らに一体何が、どんな使命を背負っているのか、運命は誰にも分らない。 この殺し合いにいる理由だってカカロットにしか分からないだろう。 巨人の相手をしているのはヴァルヴレイヴを操る少年ハルト。 彼もまた運命に巻き込まれた一人の戦士。 素性は不明だが巨人との争いは参加者にとってはうれしい誤算である。 「そうだね垣根。でもゴットの相手はどうするんだい?」 「俺に常識は通用しねえ。知ってんだろ契約魔」 「そうか……君は行くんだね」 主催。 それはこの殺し合い、バトルロワイアルの始まりを創造した倒すべき諸悪の根源。 垣根はスタージュンの裏に黒幕が潜んでいると睨んでいた。 たった一人の男にこの状況は作り出せない。 その結果絡んでいた学園都市、インキュベーターと言った協力者たち。 だがそれも違った――真の主催はもっと身近に存在していた。 サイヤの血を引く男――カカロット。 「まさか俺がアイツの手の上で踊っていたとはよ……まったくリズムが狂って上手く舞えねえ」 「僕という個体はその情報を持ってなかった……本星にはアクセスが禁止されているデータベースが存在していてね。 今ならそれが分かるよ」 「あいつが言ってた過去のバトルロワイアル……か」 カカロットが正体を表した時に言った『前にもあった』。 つまり彼が関わったバトルロワイアルが少なくとも一つあるということだ。 この殺し合いは強い奴と戦いたい、こんな理由で繰り返すなど常人には理解が苦しいだろう。 だが更木剣八や範馬勇次郎を始めとした一部の参加者は賛同している。 巻き込まれたものが多数だが。 「そのデータベースは見たのか?」 「一度ね。当時はブラックボックスも多かったし知識もなかった」 「今はどうなんだ」 「正直、悪魔超人だとかスタンド使いとか今も分からない単語もあった」 「でもね。アルター使いは乱入してきたカズマ達の事だし、もちろん君のことや勇次郎の事も書いてあったね」 「参考までに聞くが俺はどうなっていたんだ?」 「多数の人物の結末はブラックボックスでね…… 帝督は正義の人間だったんじゃないかな。劉鳳とフュージョンしてたしね」 「そうか……正義の」 こんなの柄ではない。 信条には無関係な一般人は極力巻き込まないと言うのが存在する。 それは善人な発想ではなく彼の悪党としてのプライドが故の存在。 そんな彼が正義の味方を騙った世界が存在していた事実。 「まあ関係無えけどなぁ!!」 大きく広がった翼は垣根と同じ天使のような白き翼。 羽ばたかれた翼からヒラヒラと落ちていく羽。 「そんな君の体も急激な進化に……」 落ちた羽は形もなく消滅する。 垣根が能力を解除したわけではない――形を保てないのだ。 本来存在するべき過程を通り越した進化の代償は軽くはない。 運命に干渉された因果律の歪みは罪のない持ち主に罰を与える。 「るせえ……なんならお前だって感情が植え付けられて狂ってんじゃねえか」 インキュベーターに感情は存在しないし必要ない。 だがここに来て覚えてしまった、感じてしまったのだ。 数多の参加者が繰り広げるドラマは中身はどうであれ感情の存在しないインキュベーターに干渉していた。 「そうだね……まったく君たち人間は本当に理解苦しむよ」 ■ 「ファイナル!!!!」 「無駄無駄なんだよなぁー」 「フラァアアアアアアアッシュュュ!!!!!!!」 「何でわっかんねえかな」 超サイヤ人3のベジータが放つ渾身の一撃はエリアを抉り取りカカロットに迫る。 「ハッ!」 超サイヤ人ゴットとなったカカロット。 ゴットがどれだけの力を持つかは分からない。 だが複数のサイヤパワーを、主催であるカカロットには想像も出来ないパワーを秘めているだけ。 腕から出された気弾はファイナルフラッシュを吸収し爆発した。 「おいおいさっきよりえれえ力が落ちてんぞ? そろそろ限界が近いだろベジータ……楽になれって!」 爆風が晴れて姿を現すベジータは満身創痍。 服は所々破け鮮血が辺りを飛び交い生々しい傷が目立つ。 クリームヒルト・勇次郎・ブロリー・カカロット ベジータが戦った人数は少ないがどれもが世界を代表できる全開の持ち主であり彼の体力は削れていった。 超サイヤ人3という新しい境地に辿り着くがそれでもカカロットには届かない。 どれだけ手を伸ばしても、どんなに努力をしても夢は掴めない――? 「俺にはっ帰る場所が……! ブルマの、と、、トランクスの、あいつ…らぁの地球を復活させて守……r!! だから、こんな所で果てる訳にはいかないんだァアアアアアア!!!!!」 立ち上がれ運命を背負い皆の希望となる誇り高き戦士よ―― 「うりゃりゃりゃりゃ!!」 ベジータの息の根を止めるべく瞬間移動で目の前に飛び出たカカロットの拳の乱舞。 気合で体を動かし対抗するベジータ。 完全に裁けなくてもその体力から想像できないほど拳を相殺する。 気を引き締め足を蹴りあげ顎を狙うが重心を後ろに下げ回避するカカロットはそのまま縦に回転し逆にベジータを蹴り上げる。 そのまま上に移動し腕をハンマーのように叩き降るがそれおを受け止め気弾を弾けさせるベジータ。 カカロットの顔が歪み爆発が右肩を襲う。 穴は開かないものの傷は確かに負わせることが出来た。 「往生際が悪いぞベジィィィィイイタアアアァァァァァ!!!!」 ゼロ距離から放たれるかめはめ波はどこにも逃げ場が存在しない絶望の閃光。 だが黙ってるわけにも行かない。 迷うな、戦え、攻めろ、お前がやらねば誰がやる! 「ぬん!!」 大きく気を放つ遠距離技ではかめはめ波を相殺することは不可能だ。 寧ろそこまで気を練るなど時間的にも体力的にも無理だろう。 なら瞬間的に足を気で纏い腕を狙えばいい。 蹴りはカカロットの腕を上空に向け遥か天高く、大気圏を突き破り放たれるかめはめ波。 空を切り裂く大きな一撃の反動を狙い攻撃を、野蛮な体当たりで下に向かうベジータ。 力が出ないなら自分の重さで戦えば、己の体はインパクトの瞬間に脱出させカカロットだけが大地に落ちる。 クレーターが出来るがカカロットの姿は存在しない。 気づいた時にはクレーターの中心にいたのは己だった―― 「悪かった、オラが悪かったんだなベジータ。 戦いを続けたいから手を抜いて戦う。 それで相手は、おめぇは思ったよな?『これならいける』って。 ちょっと隙を見せたら実力を勘違いして我果敢に襲いかかる…… 淡い希望を抱かせて悪かったな……もうお前死ねや」 何度目か分からない閃光がまたひとつ会場に響き渡る―――――――――― 「淡い希望を抱かせてんなら夢のままで終わらせろよ……チンピラ」 大いなる翼を抱き一人の戦士が戦場に舞い降りる―――――― ■ 誰だって一度は夢を抱く 憧れ、希望、探究心 あの時代を恥じることなんて必要ない それが生きた証だ それが今の自分の礎となっている 悪が正義の道を歩く? 別に構わないしナイスな展開じゃないか 本当に悪が改心したのか 更正した後の行いですべてを精算できるのか それは己が決めることではない 歴史が決めるのだ ■ 「お前は垣根帝督か……そっかオメェも全開に辿り着いたか! そうだよな前回も終盤まで生き残ったんだからそれぐれぇやってくんねぇとな!!」 「うるせぇよ屑チンピラ野郎。 俺には時間ってのが残ってないんだからテメェに構ってる時間なんて無いんだわ」 「ハハハハハハッハアハ!!面白えなぁ!オラに構ってる時間が無い? オラがラスボスだってのにな!」 「だったらとっとと死んでエンディング見せろやああああああああ!!」 翼に高エネルギー反応あり!それは太陽と肩を並べる程の灼熱! 内なる器に秘められた大いなる力はサイヤを焼き尽くすために形を得て一直線に放たれる。 二ィィと口角を釣り上げ片腕から気を放出するカカロット。 ちょうど二人を点として半分の所で激突する貳のエネルギーはどちらも引くことを知らない。 大地からはパラパラと石が土が砂がエネルギーに驅られ上昇を始める。 岩が隆起を起こし全ての終わりを――長いこの殺し合いが確実に終焉に向かうことを示している。 「フン!」 「甘ぇよ三下ァァアアアアアア!」 痺れを切らしたカカロットが瞬間移動で垣根の背後にワープする。 行き場を失ったエネルギーはそのまま遥か彼方へ――イデオンの方角へ飛んでいった。 垣根は未現物質で一つ細工を、一つかどうかは分からないが策を用意している。 彼の周りで展開している未現物質に常識は通用しない。 カカロットの気を感知して自動で弾丸を具現化し襲いかかる。 「うりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!」 拳で全ての弾丸を薙ぎ払う――否、全ての弾丸を垣根に反射する。 「反射であいつに勝てる奴は存在しねえ!!だから俺には効かねんだよサイヤ人!!」 弾丸は垣根に届くことなく消失する。 設定だ。 未現物質が垣根に反逆を示した場合自動で消失すると言うプログラムを組み込んだのだ。 無論今の垣根だがら可能なことであり、故に垣根と言う個体の崩壊の鐘が鳴り響いてる事実でもある。 垣根の状態は垣根ではなく未現物質そのものに近い。 肌も臓器も全てが能力で覆われている今人間と呼べるだろうか。 そして早すぎた進化に体が着いて行かず崩壊を起こし始めている――リミットは近い。 「どうしたぁボロボロだぞおめぇ」 「舐めんなよ……無限力にも対抗出来るほど俺はァ!!」 天高く降り注ぐ鋭利な塊の量は日本全土を二つ掛けて更に三つ掛けた程の莫大さを誇る。 「オラに元気を分ける必要はねぇ――勝手に使うからよ」 カカロットは会場に残っていた死体から全てのエネルギーを集め元気玉を天に飛ばす―― ■ ――俺の名前はトリコ!! 君にも感じるよ黄金の精神を―― ――これほど血肉が踊るのは久しぶりだ…… ――そんなテリーさんの靴紐が全部千切れた!? こいつは嵐が来るな―― 「こ、これは……?」 「過去に行われた悲劇の群奏劇――名を付けるなら『全開バトルロワイアル』」 「お前はキュゥべぇか……!」 「そうだよベジータ。これは過去の記憶さ」 グレートキン肉マン!?―― ――いや私だ あの動きはトキ!?―― 「ああ、分かる。知らない奴らだが懐かしさを感じる」 これがカカロットの言っていた過去の殺し合い。 見たことがない奴もいれば知ってる顔も存在する。 ――鹿目さんは私が魔女になって結界に閉じ込める……後は ダブルフェイスフラッシュで浄化してやる!!―― ――さやか……もう一度笑ってくれよ!! ――チィ!フュージョンが解けたか!? ――おい、いくら常識が通用しなくても無理は通るぞ ――せめて闇の書さえ破壊出来れば……さやかを元に戻せるかもしれないのに…… ――私に任せてもらおうか ――あの動きはトキ!? 願いの力で復活した私に加減など期待するなよさやか―― ――速さが足りないッ!! ――いやお前には全てが足りないぞォ!! そんな事は分かってんだよ破壊野郎!だから俺は速さを求める! それが死んでいった奴らの手向けになる!!―― ――コレを君に託そう鹿目まどか ――か、カーズさん…… ――泣くな俺は人間ではないし君の敵だ ――でも…… このジュエルシードがあれば君が魔女になっても助けてくれるさ―― ――そんなシーザーが命と引き換えに殺したアーカードが!? ――やれやれだぜ……コイツはピンチのレベルを超えてるぜ アーカードの腹を食い破って信長が……!?―― ――このディオよりも時を止めるか明美ほむらああああああああ!! ――そうね、それがあなたの限界よディオ・ブランド― ならば赤石を使うまでよおおおおおおおお!!!!―― ――ありがとうマミさんもう大丈夫 そう、行くのね鹿目さん―― ――だったらその手で全てを!くだらねえ悪夢を終わらせろよ!! うるせぇ!!誰もがお前みたいに反逆出来るか!?俺はお前みたいに強くねえよ!! 聞いて呆れるぜェ、ヒーローさんよォ―― 『この俺がカカロットを止める!だからブロリーはお前達に任せる!!』 ■ 「これで君が何をすべきか理解したかい?」 「ああ――行くぞ決戦だ、全てを終わらせる――!! ■ 「糞な夢見せんなよ」 最初に出ったのは能力なしに空を飛ぶ男と緑のアルター使い。 後から出会う黄金の精神を持つ男や運命に抗う黄色の魔法少女に武道家の禿頭。 そこで戦う伝説の超サイヤ人や魔王に吸血鬼との激戦の数々。 見たことのある黒き怪物を未現物質とトキと最強の正義超人親子と共に浄化し運命を切り開いた。 ここで夢は途切れ現実に視界が戻る―― 「あんないい夢見させんな……もう立ち上がれねえかもしれねえだろ……」 悪に堕ちた一方通行――いや、昔に戻ってしまった一方通行との再戦。 瘴気に当てられ上条当麻が死に吸血鬼の血を体内に宿した一方通行は虐殺を繰り返した。 一緒に行動していたヴィータを殺しても。 「せっかく止めてやったんだから……今回は生きてろよ」 学園都市の仲で殺してやった。 とは言っても完全な勝利じゃない、一方通行の中に残っていた最後の心が彼の命を自ら止めたのだ。 「眩しい……」 クレーターに大の字で空を見上げる未現物質の瞳はそれでも生きている。 負ける気など無い、想像しろ勝利する姿を――アルティメットルーティン。 無論、グルメ細胞無き垣根には不可能だがそれでも夢を捨てるのは死ぬと同義。 「行くぞ、ベジータ」 「もういいのか?」 「こっちのセリフだ、あんな光景見せられたら腐ってても動くわ」 殺し合いに巻き込まれた者達は絶望に満ちる。 仲間という微かな希望は簡単に消失してしまい反動で絶望が勝る。 それでも反逆した全開の名を持つ勇者の姿を魅せつけられて黙っていられるだろうか。 「ふん……独歩や魔法少女達はまだ生きている」 「ああ。 トリコが人を喰らったり独歩と第三位が出会ったり……デジャブだな。 そんでまたお前と、劉鳳はいねえがまた出会うとは思っていなかったと思うぜ?」 「それが嫌なら終わらせるぞ――全てを!!」 「当たり前だ誰に言ってやがる?学園都市最強の第二位様だぜ?」 輝きを失わない限り男は何度でも立ち上がる―― 「夢を抱かせて悪かったしまさか記憶が戻るとは…… 心配すんな今度は確実に息の根を止めてドラゴンボールで後遺症なく生き返してやるだから―― かーめーはめえええええええええええええええええええええ!!!!!」 「「ファイナル!!!!」」 「波アアアアアアアアアアアア!!!!!!」 「「フラァアアアアアアアアシュッ!!!!!」 何度激突したか分からない意地と意地。 ブロリーとシグナム、ルフィとカカロット、ゾロとグリンバーチ、東方不敗とプリキュア。 ヴァルヴレイヴと謎の巨人型プリキュア、人喰いとアルター使い、神と神―― 数々のドラマが生まれ消えていく繰り返される営みの中の果てに何が生まれるのか。 所詮そんなものと思った時に夢は力を無くす――ならば信じろ。 負ける姿など想像しても何も楽しくないしそれは弱者の考えである。 その弱い意志に反逆しろ。 軟弱な幻想をぶち壊せ。 自由な者が相応の力を得る。 飽きない探究心を満たし続けろ。 強者との戦いが生き抜く要素となる―― 「チィ!やるなおめぇら!!」 輝きを失わない閃光は遂に主催を飲み込む反逆の狼煙となった。 いや、傷は何度も負わせている。 勇次郎が、ブロリーが、ミケロが激戦の果てに何度も傷を負わせている。 だが、誰も決定打を与えて、誰もカカロットに負けのイメージを植えつけたものはいない。 無論カカロットは光の中でも輝いている。 だがベジータも垣根もその夢を、勝利することを諦めていない。 カカロットの後ろには天使の翼を広げ急降下する垣根。 前方には未だ気を放ち続けるベジータ。 世界を代表する永遠のNo.2が己の全てを賭けて戦っているのだ。 どちらもその強さ、気高きプライドは群を抜いている。 だがどうだろうか――今の彼らの姿は。 何度血を吐こうと、何度倒れようと、何度挫けても立ち上がり続ける。 全てを終わらせるために。 「100000倍界王拳だ、どこまで通用するか試してみっか? あぁわりぃそんな価値も無えかぁ?」 「無量大数だろうが八百万だろうが持って来いやああああああああああ!!」 紅蓮の闘気を更に纏った拳と拳のラッシュは一つ一つが世界を壊す程の威力を秘めている。 対抗する垣根は意地と能力で張り合う。 これ以上の行使は垣根の主導権が全て未現物質に乗っ取られるだろう。 それ程までに今の垣根は人間から掛け離れており、全開に近いとも言える――その前に彼の命が持つかどうか不安だが。 カカロットの格闘技術に天元突破した垣根でも敵う事はない。 反撃を掻い潜り一発また一発と垣根の体に破裂を与える無慈悲な拳。 その度に何度も何度も再生される未現物質。 (……再生の精度が下がって来てやがる……) 肌に罅が入り始め再生の速度が低下して来ており衝撃も段々と直に響くようになる。 垣根帝督の『補正』が薄れきた証拠である。 本来強者に牙を向く『制限』だがカカロットは考えたのだ。もっと強い奴と戦いなら強くすればいい。 その結果が今の状況を作り上げた。 ソウルジェムを破壊されても死なない勇次郎。 一方通行に勝利した御坂美琴。 分裂する巴マミ――全てはカカロットの思惑を具現化した茶番である。 全ては最強の奴と戦いたい願いが動かす悲劇の嵐。 「もう十分だベジータ!僕の全てを君に預けるッ!!」 キュゥべぇは覚悟を決めて己のエネルギーを全てベジータに授ける決意を固める。 本星無き今彼の個体のバックアップは存在しないため事実上の死を迎えることになる 感情が付加された今一層死の重みは以前と比べ増しているのにも構わず決意する。 「感情が付いて解ったよ……本当に要らないモノだね」 自分の使命に枷を付ける感情など無い方が光栄だ。 余計な思いは迷いを与え、迷いは全てに不安要素を残し、不安要素は破滅を招く。 効率を重視したインキュベーターには決して必要のない産物である。 「そのせいで僕は今恐怖している……死と言う終わりの終わりに!感じたこともない!! 死んだらどうなるか!?そんなの新しい個体に受け継がれるだけさ!墓に入る何て発想もない!! それでも今の僕には分かる!まだ生きていたいんだ!!」 「お前……グォ!?」 キュゥべぇの叫びに驚きを隠せない垣根。 主催の場で出会ったキュゥべぇは感情の存在しない契約機械だった。 それが今生に執着したい絶望と勝利の礎になりたい希望の狭間で歪んでいる。 そんな垣根の思考停止にカカロットは構いなしに回し蹴りを叩きこみキュゥべぇの近くに垣根は落下する。 「また感情が付いたのかぁ?前は電撃女の願いで感情が付いたんだけどよぉ……天丼は好きじゃねぇぞ」 「君には分からないかもね孫悟空!僕は今悔いているんだ――全ての魔法少女に」 淡い希望をチラつかせ使命のために深い絶望に叩きこむ準備。 そして時が来たら希望の代償を押し付け己の使命に利用するだけ――幾多の少女がその生を散らした。 「これで全てが許されるかどうかなんて分からないし僕自身許されるつもりはない! でも責任はせめて君を倒すことに貢献する形で取るつもりだ! 後は生き残っている僕の―― 最高の5人の魔法少女が全てを導く!!!」 キュゥべぇを中心に渦巻くエネルギーはエリア一帯を飲み込むほどの規模。 光り輝く彼から開放されるのは多くの夢の欠片。 本星に供給していないエネルギーを全て開放しているのだ。 「な!?おめぇはあの個体じゃねぇのにどうしてそんな力が!?」 「ただドラゴンボールに始まりを告げた君は知らないさ。 僕はこの会場で鹿目まどかと契約を結んだ――つまりクリームヒルトのエネルギーを持っている」 「そっか……やっぱあの子はオラの前に何度も邪魔するのか」 「そうさ彼女は最高の魔法少女になる素質を秘めているからね。 その内イデも倒して皆を救済する奇跡の魔法少女になるさ」 「イデを殺す何て物騒だなー怖いのは嫌れぇだぞ」 「だ、黙れ……!」 一筋の流星がカカロットを貫くビジョン――アルティメットルーティン。 微かな力を振り絞ったベジータの一撃はカカロット――孫悟空に届くが不発。 本能で振り払う悟空の右手に浮かぶが星々の煌めき――鮮やかな格闘技術は芸術の域に辿り着く。 「さぁ受け取るんだ!ベジータァァア!!僕の意思を!魔法少女の夢と希望を!!!」 白銀の煌めきはベジータに降り注ぎ―― 「そんな事さっせかよ――波アアアアアアアアアアアアアアア!!!!」 ――その時不思議な事が起こった―― 「な、何だ!?」 カカロットがキュゥべぇを止めるためにかめはめ波を放つ前に起きた出来事。 空高くから降り注ぐエネルギーに襲われ攻撃を中断する。 放ったのは誰なのか。 瀕死のベジータや垣根には無理だろう。 一護もゼブラも駆けつけてはいない。 「これは――オラのかめはめ波!?」 降り注ぐエネルギーの正体はカカロット自身の奥義かめはめ波であった。 でも何故だろうか?たしかに一度かめはめ波は空に消えていった。 しかしそれが降り注ぐ理由には為らない。 「何かに反射でも――――――――――まさか!?」 「その隙を逃す程俺は諦めてなんかいねえぞ一方通行アアアアアアアアアアア!!!!!」 戸惑いにより硬直したカカロットに攻撃すべく己の翼を引きちぎり投げつける垣根。 対の鋭利に硬直した翼はサイヤ人を斬り裂くために襲い掛かる。 「甘ぇ!!」 「それだけならな!!」 カカロットは簡単に翼を叩き落とし垣根の攻撃は結果的に意味を持たない。 だが見現物資には反射がプログラミングされており着弾したかめはめ波がカカロットに衝撃を与える。 「第三位がぶっ飛ばして第一位が反射した力をテメェに叩きつける――これが学園都市の意地と力だ糞野郎!!」 宇宙に飛ばされた一方通行は死んでなどいない。 だが帰還する方法もないため考えることを辞めていた。 しかし地球から届く光が洗脳されていた本能を呼び覚まし、彼も過去の記憶に目覚める。 全てを反射した一方通行は更に奥に飛ばされ確実に帰る事は無いだろう。 それでも彼は選んだのだ――皆の勝利を。 「おいベジータ……俺もお前と勝利の礎になってやる」 ■ 「ま、眩しい……!!」 エリアを、いや会場全体を包み込む白銀の閃光。 その付近にいるカカロットは瞳を一度暗闇に逸らす。 姿は確認出来ないが気では感じ取れる――一つになった三つの気が。 光が薄れるに連れて視界も徐々に晴れて来てやがて瞳は再び前を向く。 光の中心にいるのは―― 思い返せばこの戦いはそれなりに楽しめた。 覇気を扱う未来の海賊王との初戦。 地上最強の生物との激戦。 意地を見せたガンダムファイター……。 それでも彼を満たすことはなかった。 その理由も今なら分かる――。 「やっぱ最後はおめぇしかいねぇ……ベジータ」 白銀の髪に蒼炎の闘気を纏うベジータ。 そして背中には立派な大天使の翼を携え満を持して降臨した。 夢を乗せた翼に思いを込めてベジータはキュゥべぇと垣根を背負い未来へと羽ばたく。 「超サイヤ人キングとでも名乗らせて貰おうか……魔法少女とキュゥべぇそして垣根の想い……貴様に刻み込む!!」 今此処に告げる――この戦いは全開だ―――――――――― 【きゅぅべぇ@魔法少女まどか☆マギカ 消滅】 【垣根帝督@とある魔術の禁書目録 消滅】 【D-6/1日目・午後】 【孫悟空@ドラゴンボール】 【状態】 疲労(大)ダメージ(中)スーパーサイヤ人ゴッド 【装備】 上半身裸 【持ち物】ランダム支給品0~1、基本支給品一式 【思考】 基本: 優勝してドラゴンボールでみんなを生き返らせる 1:ベジィィィィタァァァァァァアア!!!! 【備考】 ※連載末期の魔人ブウと戦ってた頃からの参戦です。 ※ベジータの言葉の影響はありません。 【ベジータ@ドラゴンボール】 【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、固い決意、魔法少女の夢と希望、未現物質、超サイヤ人キング 【装備】 上半身裸 【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式 【思考】 全てを背負いし覚悟を決めた戦士 【備考】 ※全開の領域に辿り着きました 「ったく俺も焼きが回ったか」 『そうだね君も消滅する必要は無かったね』 「それでも俺の体は長く持たないし仕方ねえさ」 全てを託した彼らに足掻く権利など存在しない。 あるのは歴史を見届ける使命が残るだけ。 舞台から堕ちた役者は物語を最後まで目を逸らさず向きあえばいい。 「まったく感情なんて……こんなにも素晴らしいんだね」 「ああ、全くだ……人生ってのは案外悪いモンじゃない……」 あの素晴らしき愛をもう一度 時系列順 欲張りキングになろう 投下順 邪神降臨 孫悟空 アルティメット・バウト・ファイナル ベジータ アルティメット・バウト・ファイナル とあるお嬢のマッハキャノン きゅぅべぇ GAME OVER 第二回放送 垣根帝督 GAME OVER
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/175.html
前の話 秋雲がお澄まし顔で椅子に座っている。私は座布団の上に胡坐をかいて白いページと右手にもった鉛筆を交互に見ていた。 「提督~まだまだー?」 楽しそうな煽り声に私は少しむっとした。 「前にも言っただろう、絵心はないんだ!五歳児に描かせた方がまだマシなレベルだぞ」 ケラケラと秋雲は笑いながら足をバタバタさせた。 「いいじゃんいいじゃん、無茶なお願いじゃないでしょー?ほらほら、手を動かす」 「…後悔しても知らないぞ」 私は諦めて鉛筆を動かした。秋雲を見ながら、チラチラと白いページに目配せする。ゆっくり、ゆっくりと黒い線が描かれていったが―――――これは宇宙生物か何かだろうか?秋雲のように上手く描けるとは思わないが、もう少しまともに描けないのか、と自分自身に落胆する。秋雲は椅子から立ち上がって私に近寄った。スケッチブックに顔を覗かせてすぐに「プッ!」と噴出した。 「ちょっと提督~秋雲さん全然かわいくないんですけどぉー!」 大袈裟に笑いながら畳の上を腹を抱えて転がった。憎たらしいその行動にふつふつと怒りがこみあげてきた。 「……もうやってられるか。終わりだ、終わり」 私はバンッとスケッチブックを閉じてそっぽを向いた。ドタドタとした音がピタリと止んですぐに右肩に重みを感じた。 「まぁまぁ~じゃあさ、秋雲さんが提督に絵を描くコツを教えてあげるね~」 「……コツ?宇宙生物をミミズにする方法か?」 アッハッハ!とまた高い笑い声が響いた。バンバンっと強く右肩を叩かれる。少し痛い。 「あのねぇ提督ー 対象を見ながら触ったらジョーズに描けんだよー」 秋雲は私の手を取ると自身の顔へくっつけた。初めて触れた秋雲の頬は決して冷たくなかった。体温があった。私は指を少し動かした。ふにふにと、頬の弾力を指の腹に感じた。秋雲はくすぐったそうに笑った。 「もっと触ってもいいよー」 私は手を動かして顎の下をなぞった。男のそれとは違い柔らかくて滑らかで細い。それから首の後ろへと指をゆっくり移動させた。親指で耳たぶを何度か押したり引いたりして、親指と人差し指で挟み込んだ。柔らかな感触が気持ちいい。耳たぶの柔らかさを堪能した後はまたさらに指を奥に進めて指先が項に届いた。肌の表面を上下にゆっくりと撫でる。 「……んっ」 微かに聞こえた声に私の体がビクリっと跳ねた。秋雲に触れていた手をサッと引っ込める。先ほどまで女の体をなぞっていた手を凝視した。思えばこうやって異性の体に触れるのは久方ぶりだった。基地には艦娘がいるが、仕事のパートナーとしての付き合いを徹底している。見た目の美しい艦娘は多かったが、私は彼女たちをそういう目で見たことがほとんどなかったし、そういう風に触れたいとも思ったことがなかった。性欲は人間の三大欲求の一つだ。どうしても溜まってしまった時は一人で処理をしたし、たまに遠くの街へ出てそういった店を訪ねていた。艦娘たちと一定の距離を保つために思わせぶりな行動をしないように気をつけていた。しかし、私は今何をした。秋雲は触ってもいい、と言った。私は自分で定めたルールも思い出さず、秋雲に触れた。秋雲が声を出さなければもっともっと、彼女の体を堪能しようとしたはずだ。何よりも驚いたのが、私はこの状況に性的興奮を少なからず感じていることだ。 「どーしたのさ提督?触んないの?」 秋雲が不思議そうに私を見上げる。その無垢さがいやらしい気持ちを抱く私を責め、同時にゾクゾクとさせた。これ以上秋雲に触れたら引き返せなくなりそうだ。私は頭を横に振る。 「もう充分だ。下手なりにちゃんと描いてやるさ」 そう言って秋雲と距離を取ろうとした時、強く腕を掴まれた。ニヤニヤ顔が私を見つめている。 「あ~提督ぅ、もしかして秋雲さんに触ったらこ・う・ふ・ん・しちゃったの~?」 興奮の言葉を意地悪く強調される。私は慌てて頭を振った。 「そ、そんな訳がないだろう」 秋雲の手を離そうとしたが逆に秋雲が私に顔を近づけた。 「提督っていちおー女に興奮するんだ?艦娘に全然靡かないし、正直そういう趣味の人かと思ってた」 「からかうのもいい加減にしろ!」 秋雲の肩を掴み私から引き剥がそうとした。 「いいのぉ?秋雲さんは、いいよ」 その言葉に腕の動きが止まった。 「提督になら、私、好きにされてもいいよー」 猫が頬を摺り寄せるように、秋雲は肩の上にある私の右手に顔を押し付けた。私を淫らに誘う女の目をしながら。その姿にゴクリッと喉が鳴った。同時に一つの疑問が浮かび上がる。 「………お前は、私をそういう風に慕っていたのか?」 生前の秋雲との付き合いは私にとって気軽であった。秋雲の私を見る視線には恋愛感情の類を全く感じなかったからだ。馴れ馴れしく私に接することはあったが、小動物にじゃれつかれているか、姪が叔父に懐くような、そういうものを感じていたから、私は他の艦娘よりも秋雲といるのが好きだった。 「多分、違うんじゃないかな」 秋雲は私の右手から顔をあげた。 「生前の私は提督のことは良い上司として好きだったよ。他の艦娘が提督にラブアピールしても全然気にならなかったし、嫉妬もしなかった。今も同じ気持ち。提督とこの部屋で過ごしている間に全然そういう雰囲気にならなかったのは、…私の時間も心も死んだあの時で止まっていて、新しい感情は生まれてないからじゃないかなー今もこう、胸がキュン!となってないし」 「……では、何故好きにされてもいい、など…」 さぁね、と秋雲は微笑んだ。 「でも提督が秋雲を求めるなら、それに応えてもいいかなーって。お礼代わり、って意味もあるかも」 二人の間に暫く沈黙が流れた。その沈黙に居心地の悪さを感じたのか、秋雲の微笑みに困惑の色が見え始めた。 「ごめんね~…提督のことそういう風に好きだったらまだ気分のって出来たよね……うーん、その、提督が嫌なら別にしなくてもいいよ。ただ、提督が秋雲の絵を描いてくれるだけでいいし……?提督?」 秋雲が戸惑った声で私を呼ぶ。私が秋雲の頬に触れたからだ。 「……本当に、いいんだな?」 私の右手に秋雲の手が重なる。 「絵もちゃんと描いてね~」 私はフッと笑みを零し、微笑む秋雲の小さな唇にそっと自分のを重ねた。 秋雲の体はまるで中学生のそれを同じだ。発展途上の体つきであり、初々しく穢れを知らない。とても白くて眩しい。服も下着もすべて脱がされ、一糸まとわぬ未熟な仰向けの体は布団の上で一人の成人男性の手によってゆっくりと撫でられている。秋雲は自分から誘ったが、こういったことには慣れてないようでいつもの悪戯心溢れる顔つきが今は羞恥で赤くなっていた。その情景は私の興奮をさらに加速させる。女としてまだ成長途中の果実を食す行為に背徳と罪悪と、喜びを私は感じていた。白くて柔らかな体を堪能していると、小さな手が私の右手の甲を軽く抓った。空いた手が私の膝の上にあるスケッチブックを指差す。私は渋々手を離すとスケッチブックと鉛筆を掴み、白い空間に線を描き始めた。秋雲の体とページを交互に目をやる。秋雲は描く対象を触れば絵が上達するとはいったが、触れる前に描いたものとそう大差ないものが出来上がりつつある。絵に達者な秋雲が言うのだから実際に効果があるのかもしれないが、今までとんと絵を描いたこともない素人が同じ方法を試してもその努力がすぐに反映される訳がないのだ。ただ違う点を挙げるとすれば、今は描きながら興奮している事だ。白い空間に描かれていく歪な線の集まりを見ただけでも気分が昂っていた。早く触りたい、と。 ある程度描き終えるとページをめくり、また膝の上に置くと手を少女の裸体に伸ばし、触った。秋雲は目を細めて体を震わす。その震動が手に伝わった。手はゆっくりと腰のラインに沿って下に移動し、太腿に到達した。軽く揉むとその柔らかさが心地よい。五本の指でぐにぐにとこねていると小さな声が聞こえた。秋雲の顔を見ればさらに頬が紅潮していた。私は膝のすぐ下まで手を持っていくとグイッと持ち上げた。秋雲の細かった目がビクッと大きく見開いた。私はスケッチブックを横に置き、体勢を変えた。持ち上げた片足を前に寄せて顔を近づけ、目の前の膝小僧を舐める。足がピクリと跳ねた。舌先から甘い味が広がる。私はさらに体を屈めて唇を膝小僧から下へ、脚の付け根へと這わす。チロチロと舌で太腿を味わい続けているとグイッと頭を押された。秋雲の手が私の動きを制しているのだろう。私は空いた手で秋雲の手を掴むと無理矢理引き剥がした。そのまま舌で秋雲の体をなぞる。秋雲が抗議の声をあげるが、無視をして腹を舐めた。高い声が鳴った後、続いて笑い声がした。どうやらくすぐったいようだ。私が脇腹の近くを甘く噛むと肩をバンバンと叩かれる。体も私の責めから逃げようとグイグイ動いていたが私から離れないように押さえつける。しばらく暴れていたが、諦めたのか大人しくなった。私は唇を上へ上へと移動させ、小さな膨らみの上を進み、突起を口に含んだ。固くなった突起を舌でグリグリと弄ぶ。胸がやけるような甘い味と香りに目眩を覚えそうになる。何度か女を抱いた経験はあるが、初めて好きな女を抱いた時のような高揚感を今思い出していた。私は胸から口を離すと秋雲の顔を見た。秋雲は荒い息を吐きながら赤らんだ顔で私を見つめ返している。唇が小さく動いた。提督、と呼ばれた気がして、私は顔を近づけ、服を脱がせる前にしたように、秋雲と唇を重ねた。秋雲の唇はとてもあたたかい。まるで本当に生きているようだ。死んでいるなんて、信じられない。僅かに開いた隙間に舌を差し込む。口内もあたたかかった。己の舌が秋雲のそれに絡みつき何度も何度も熱を確かめる。熱は一向に引く事はなく、益々熱くなっているようだった。その熱が嬉しくて私は、私は、 ペシペシと頬が叩かれた。秋雲の手だ。呼吸が苦しくなったのだろうか、私は秋雲から唇を離した。名残惜しそうに唾液の糸が私の舌先から垂れた。おかしなことに秋雲の顔がゆがんでぼやけている。 「……なーに泣いてんのさ、提督」 秋雲の言葉で、ようやく私は自分が泣いていることに気付いた。秋雲の手が伸びて私の頭を優しく撫でる。 「そんなんじゃ絵なんて描けないよー」 秋雲は上半身を起こすと私の顔に近寄り、目尻を舌で舐めた。溢れる涙と、涙が伝った頬をあたたかな舌が拭っていく。何か言葉をかけようと思ったが喉が詰まって何も言えなかった。 「……提督、秋雲、本当は自分が沈む所を描いて欲しいんだよね~」 私は驚いて秋雲を見た。 「でもそんなの、誰にも頼めないっしょ。でも誰かに秋雲のこと描いて欲しかった。それが提督で良かったよ」 横に置かれたスケッチブックを秋雲は手に取った。パラパラと前のページをめくる。最初の一枚は椅子に座っている着服の秋雲、二枚目からは服が乱れ、ページが進むごとに肌の露出が高くなっていた。絵が下手でも、その程度のことなら第三者の目から見ても分かる、はずだ。秋雲はからかうことも茶化すこともせず、静かに絵を眺めていた。その横顔は穏やかな笑みだった。私も涙がようやく落ち着き、目を強く服の袖で拭った。秋雲に近づき彼女の手からスケッチブックを取り上げる。転がっていた鉛筆も掴んだ。 「……後ろ、後姿を描く」 りょーかい、と言って秋雲は私に背を向けた。私は白紙のページを開き、鉛筆を走らせた。 そうして私は、秋雲を白い空間に何度も描き、何度も体に触れ、何度も彼女の熱を確かめた。 そして、ついに夜が明けた。 雲一つない青空が広がっている。 その空の下、港に立つ瑞鶴は深呼吸をする。心臓の音が緊張で早くなっていた。 「そこに立ってると邪魔なんだけど」 「わっ! ……って、加賀…さんですか」 後ろにいる加賀を見て瑞鶴は眉間を顰めた。はぁ、と加賀は小さく溜息を吐いた。 「久々の実戦で怖いの?やっぱり貴方は出撃しない方がいいんじゃないかしら」 「な!んなことないですし!ただの武者震いですし!」 怒る瑞鶴を見ても加賀は表情一つ変えなかった。そう、と興味なさそうに呟くだけだ。 「瑞鶴落ち着いて…ほら、もう少しで出撃の時間よ」 慌てて二人の傍に来た翔鶴が瑞鶴を宥めた。瑞鶴は頬を膨らませてツンっと横を向いた。 「やれやれ…あの二人は相変わらずだな…」 それを見ていた長門は呆れているような声を出す。 「お前たち、準備はいいか」 長門が振り返ると提督がこちらへ向かって歩いていた。その後ろでは北上が前を歩く木曾のマントの裾を面白そうに持ち上げながら歩いている。 「あぁ、司令官。私はいいぞ。…多分あいつらもいいはずだ」 長門は親指で空母たち三人を指した。 「よし、ではみんな、並んでくれ」 提督の合図で横一列に翔鶴、瑞鶴、加賀、長門、木曾、北上が並んだ。 「本日は北方海域のアルフォンシーノ方面への出撃だ。深海棲艦がまたその辺りに集い始めているとの情報があった。第一艦隊はアルフォンシーノ方面に赴き、深海棲艦を見つけ次第すべて撃滅せよ。旗艦は瑞鶴とする。途中損害が酷ければ直ちに帰投しろ。また、基地へ到着するまでは決して油断するな。慢心せず、注意を払え」 はい、と六人は返事をした。 「そして瑞鶴」 「ふぁ!?な、何ですか」 提督に急に呼ばれて瑞鶴の声が裏返っていた。 「久々の実戦で不安なことはあるかもしれないが、お前もこの基地の大事な主力の一人だ。自信を持て、前を進め。頼んだぞ」 瑞鶴は目を何回もパチパチさせた後、ピシッと姿勢を正してはい!と大きく返事をした。 「加賀と翔鶴は瑞鶴のサポートをお願いする」 「承知しました」 「了解です」 よし、と提督は安心したように頷いた。 「それでは第一艦隊、出撃せよ」 雲一つない青空が広がっていた。 第一艦隊は予定通りに港を発った。艦娘たちは既に水平線の向こうへ消えている。 男が一人、プライベートルームのドアの前に佇んでいた。数十分も何もせずにそこにいたが、意を決したようにドアノブに手をかけた。ドアは難なく開き、男を部屋の中へと招く。男はゆっくりと足を進めた。居間への襖は閉じられており、玄関側は少し薄暗い。男は靴を丁寧に脱ぐと冷たい床の上を歩いた。襖の取っ手に手をかけ、深呼吸をし、開いた。 誰もいなかった。 何の声も聞こえなかった。 男は一人だった。 男はのろのろと窓際にある椅子へと向かった。椅子の上にはスケッチブックが一冊置かれていた。男はそれを手に取り中を開いた。 瑞鶴がいた。男が港で見送ってきた、瑞鶴がいた。久々の実戦に瑞鶴は小さな不安を抱いていたが、いざ出撃した時の彼女の背中は熟練の艦娘と変わらぬ、頼もしく力強いものであった。 その絵を見ながら、男は静かに涙を流した。 「翔鶴姉、早く早く」 瑞鶴は後ろで不安そうに歩く翔鶴に声をかけた。 「待って瑞鶴…あの、本当に大丈夫なの?ここに来ても…」 「大丈夫だって!だって提督さんが瑞鶴たちを呼んだんじゃん。来いってさ」 「そ、それはそうだけど…」 瑞鶴は大きく溜息を吐くと翔鶴の手を取った。 「いいからいいから、ほら行くよ!」 「あ、もぅ瑞鶴ってば!」 煮え切らない翔鶴の手を引っ張り瑞鶴は先へドンドン進んだ。基地で比較的新参者の瑞鶴にとってこの通路の先にある部屋に行くのは二回目だったが、翔鶴や他のほとんどの艦娘はこの建物自体に足を踏み入れたことがなかった。建物の存在は誰もが知っていたが、ある意味ここを訪れることは禁止にされていたからだ。この建物の最上階には提督のプライベートルームがあるのだが、提督はその部屋に自分以外の者が立ち入ることを酷く嫌っていた。緊急事態があれば携帯への連絡を徹底し、部屋を訪れることを許していなかった。提督に猛烈にラブアピールしていた艦娘さえ、押しかけ女房のように提督のプライベートルームに行くことは躊躇うほどだ。そんなことをしてしまったら最後、解体でも近代化改修の餌にでもされかねなかったからだ。しかし、つい昨日提督は瑞鶴と翔鶴に都合が悪くなければそのプライベートルームに来て欲しい、とお願いしたのだ。 「そう心配することないと思うよ。提督さん、最近はすっごく丸くなってるし」 瑞鶴の言葉通り、提督は変わった。サブ島沖海域で連絡が途絶えた艦娘たちの捜索隊が無事に彼女たちを見つけ帰投した後から、提督は瑞鶴の謹慎を解いた。それから瑞鶴を演習に参加させるようになった。先日は久々に海域へ出撃し、深海棲艦たちを蹴散らすことも出来た。装備も強いものを与えられ、瑞鶴は強くなる機会を取り戻したのだ。それに、ビジネスライクを思わせる提督の艦娘への接し方が前より穏やかなものへと変わった。ただしやはり、分かり易くラブアピールをする艦娘には全く隙を見せることはなかった。そういうおカタい所がいいのデース、なんてまた別の意味で火がついたようだが。 「でも何の用かしら……この間の出撃は深遠部まで行ってもみんなほぼ無傷で帰還できたのに…」 「さぁ…でも瑞鶴たちに関係あることを話すんじゃないかな。……色々と、さ」 提督は瑞鶴に寮外に出ることを禁止にした理由を未だに語らなかった。もちろん翔鶴にもだ。今までの非礼の謝罪しか聞いていない。 「その話だといいんだけどなぁ……あ、見えたよ、あの部屋だ」 二人はプライベートルームの前まで来た。ドアの右側には名札が貼ってあり、左側にはインターホンが設置されていた。そういえば、前にここに来た時は興奮していたからインターホンが目に入っていなかった。無遠慮にドアを叩いてしまったことを思い出し、瑞鶴は申し訳ない気分になった。気を取り直してインターホンを押そうとした時、瑞鶴は妙な違和感に気付いた。 「瑞鶴?どうしたの?」 「あ、いや、何か足りないなと思って…」 「足りない?何が?」 「うーん……なんだろ、ま、いいや」 瑞鶴がボタンを押すとピンポーンと機械音が鳴った。数秒ほど待つとガチャリとドアが開いた。 「瑞鶴、翔鶴、よく来たな」 「お、おはようございます…!」 目の前に現れた提督に、二人は頭を下げて挨拶をした。上からおはよう、と低い声が返って来た。 「来てくれてありがとう。さぁ、入ってくれ」 瑞鶴と翔鶴は恐る恐る部屋の中へと足を踏み出した。 「お邪魔します…」 提督のプライベートルームはとても質素なものだった。キッチンも綺麗に片付いており、汚いところはない。居間も本棚にギッシリ本が並んである以外、乱雑になっていなかった。ただ、窓から見た景色がとても綺麗であった。最上階であるこの部屋からは水平線も港も演習場も見渡せた。今日のように天気の良い日は、最高の眺めであった。瑞鶴と翔鶴が窓の景色を堪能していると後ろから二人の名を呼ぶ声がした。振り返ると提督が赤色のスケッチブックを差し出していた。近くにいた瑞鶴が受け取り、中を開いた。 「わっ すご…」 スケッチブックには多くの艦娘や基地の景色、そして深海棲艦の絵が描かれていた。どの絵も今にも動き出しそうなほど躍動感に溢れたものだった。 「ね、ねぇこれ!翔鶴姉だよね」 何十枚かめくった後に翔鶴のページが現れた。演習中の翔鶴を描いたもので、普段と違う真剣な表情に瑞鶴は目を奪われた。 「すごいなーかっこいいね、翔鶴姉」 翔鶴を見ると、その目が驚きで見開かれていた。自分の絵に驚いているというよりも、もっと別のことに目を奪われているような、そんな驚き方だった。 「確か瑞鶴の絵は数ページ先にあったはずだ」 「え?!本当?」 瑞鶴は急いでページをめくった。すると目当てのものが目の前に現れた。 「わぁ……」 瑞鶴はただ感嘆するしかなかった。先ほどみた翔鶴と違って動きのない絵だったが、その力強いタッチに瑞鶴の体は震えた。その震えには覚えがあった。そう、久々に出撃した時に感じたあの震え。 「それは先日描かれたものだ。瑞鶴の久しぶりの出撃の日に」 「すごい…!提督さんって絵の趣味あったんだね」 提督は頭を横に振った。 「これは私が描いたものではないんだ」 「え?じゃあ誰が描いたの?」 瑞鶴は頭をあげて提督を見た。提督は、フッと静かに笑った。その笑顔が何処か寂しそうに見えて、瑞鶴はドキリとした。 「絵を描くのが得意なやつがいたんだ…彼女は、瑞鶴と翔鶴を描きたいとよく言っていた。ついにその夢を叶えることができたんだ」 「あれ、そんな子いたんだ…?」 瑞鶴は首を傾げた。瑞鶴はこの基地にいる艦娘全員とは顔を合わせた記憶があるが、誰からもそういった話を聞いたことがなかった。 「瑞鶴、その子にお礼言いたいな。こんなにかっこいい翔鶴姉と瑞鶴見れたもの!」 提督は再び頭を振った。 「…すまない、彼女はもうここにはいないんだ」 「え?!そ、そうなの?なんだ、いないのか…」 残念だね翔鶴姉、と声をかけようとして隣を見ると、翔鶴の表情は相変わらず険しかった。何が翔鶴をそこまで驚かせているのか、瑞鶴は不思議で仕方なかった。 「…翔鶴姉?どうしたの?」 「あ、……ううん、何でもない。何でもないわ」 翔鶴は瑞鶴に笑いかけると提督に顔を向けた。 「その人はもう、ここには戻って来ないのでしょうか」 「そうだな、きっと」 「そう、ですか…」 翔鶴と提督は黙り込んだ。二人の間に妙な沈黙が流れる。まるで二人だけは通じ合っているような、そんな沈黙。その沈黙に段々瑞鶴は居心地の悪さを感じ始めた。 「そういえば」 先に沈黙を破ったのは提督だった。 「賞状と勲章は受け取ることにした」 賞状と勲章?瑞鶴には何の話か全く分からなかったが、翔鶴が嬉しそうに声を上げた。 「提督、本当ですか?」 「あぁ。何となく吹っ切れてな、頑なに跳ね除けなくてもいいかもしれないと思い始めたんだ。これで友人の小言からも解放されるが…… 戦ったのは私ではなく艦娘たちなのに、私の名で授与されるのが申し訳ない」 「私たち艦娘は貴方の下にいたからこそ周りから称えられるような戦果を残せたのです。私たちのことは気にせず、貴方が受け取ってください、提督」 「翔鶴……ありがとう」 先ほどよりもさらに濃厚な二人の空間に瑞鶴は気圧されていた。提督と翔鶴を交互に何度も見遣り、あー!と急に声を出した。二人は驚いて瑞鶴を見る。 「ちょっと!賞状とか勲章とか何の話?!あとスケッチブックも!結局誰が描いたのよー!瑞鶴を置いて二人の世界を作らないで!」 「ご、ごめんなさい瑞鶴…そういうつもりじゃなかったんだけど…」 翔鶴はおろおろしながら瑞鶴を宥めた。 「っていうか!提督さんはどうして瑞鶴を外出禁止にしたの?瑞鶴何かやらかしたの?」 瑞鶴は一番の疑問を提督にぶつけた。提督は申し訳なさそうに眉間を歪める。 「すまない瑞鶴。お前を閉じ込めた理由だが…聞かないで貰えるか?君にはとても悪い事をしたと思っている。しかし私はその理由を告げることはできない。少なくとも、まだ今は」 瑞鶴は提督を見つめる。提督は目を逸らさなかった。瑞鶴には提督が何を考えているのかが全く読み取れなかった。しかし、瑞鶴に外出禁止を言い渡した時よりも、優しい目をしている気がした。 「……分かった。じゃあ聞きません」 渋々瑞鶴がそう言うと、提督が安心したように笑った。 「ありがとう、瑞鶴」 ドキリと、また瑞鶴の胸が疼いた。ビジネスライクの笑顔とは違う、何処か純朴な笑顔だった。 「ところで、この後は二人は予定はあるのか?」 「いえ、何もありませんが」 翔鶴が答えると、提督がそうか、と呟いた。 「昼が近いが、一緒に食べないか?カレーを作ってあるんだ」 「えっ えぇ!?」 瑞鶴は提督の誘いに驚きを隠せなかった。艦娘と距離を置いて接してきた提督が自らその艦娘を食事に誘うのだ。提督が以前と変わってきていることは感じていたが、ここまでその変化が影響しているのかと瑞鶴はある意味感心していた。 「久々にこの部屋で誰かと一緒に食べたくなったんだ。間宮の料理がいいなら、無理に付き合わなくてもいいが」 「えっと、瑞鶴はいいけど…翔鶴姉も大丈夫だよね?」 翔鶴はえぇ、と頷いた。 「是非、ご一緒させてください」 二人の返答を聞いて提督はちゃぶ台を指差した。 「ならゆっくりしていてくれ。準備してくる」 「何かお手伝いできることがあればやりますが」 「翔鶴も気遣わなくていい。あぁ、本棚にあるものは読んでいて構わない。他のスケッチブックもあるから見るといい」 提督はそう言うとキッチンの方へ消えていった。瑞鶴は翔鶴と顔を見合わせた。 「えぇっと…じゃあ、ゆっくりしましょうか、瑞鶴」 「うん…あ、他のスケッチブックも見たい」 瑞鶴は本棚の方へ行くとスケッチブックを探した。上から四段目の棚にスケッチブックが並んでいた。青、赤、黄色、緑――――――様々な色の表紙だった。 「黒はないんだ…」 瑞鶴は適当に四冊ほど取ってちゃぶ台に戻った。座布団に座って待っていた翔鶴の前にスケッチブックを置く。 「あ、ねぇ翔鶴姉はこの絵を描いた人のこと知ってるの?」 「え?どうして?」 「いや…何か知ってそうだったから」 翔鶴は困ったように笑った。 「…思い当たる人はいるけど…私の勘違いかもしれないから。それに提督は話したくないようだから、私も話さないわ」 「話したくないって…それって瑞鶴を閉じ込めた理由だけじゃないの?」 「もしかしたらそれに関係する人かもしれないから、ね」 翔鶴の話は腑に落ちなかったが、瑞鶴はそれで納得するしかなかった。仲間外れにされた気分だが、二人とも話す気がないから深く問い詰めるのも気が引けた。 「……じゃあさ、賞状とかの話は?」 「南方海域まで行けるようになったでしょう?それの表彰よ」 「そうなんだ…って、何で翔鶴姉が知ってるの?」 「提督のお知り合いの議員の人が話してくれたのよ」 「ふーん…」 外出禁止を命じられている間、翔鶴以外の艦娘との交流もあまりなかった。会話までは禁止されていなかったが、理由が不明なのと提督の態度に周りは瑞鶴とどう接していいのか分からなくなっていたらしい。寮外に出ることを禁止されている瑞鶴に外の話をすることで瑞鶴を傷つけるのではないか、と心配していたことを他の艦娘から聞いた。謹慎を解除されてからは艦娘たちは色んな話を瑞鶴にしてくれた。あの加賀でさえ、演習場では瑞鶴の面倒を見たり海域ではフォローをしてくれた。提督の命令もあったからだろうが、何となく加賀の優しさも感じないこともなかった。そうやって周りが瑞鶴との距離を埋めようとしていたしそれを嬉しくも思っていたが、やはり、寂しさは拭えなかった。 瑞鶴はスケッチブックを一冊取って中を開いた。先ほど翔鶴と一緒に見た物に描かれていなかった艦娘がいた。遊んでいる所や寝ている所、ご飯を食べている所など、日常的な場面が多く描かれていた。間宮が料理を作っている絵もあった。仕事中の提督もいた。そこには瑞鶴の知らない光景ばかり描かれていた。 「カレーが出来たぞ。上を片付けてくれ」 提督の声が聞こえ、瑞鶴と翔鶴はちゃぶ台に置いていたスケッチブックを床に置いた。提督はトレイにカレーを二皿乗せて運んできた。カレーの良い香りが鼻の奥を擽り、口の中で涎がじわりと溢れる。提督は瑞鶴と翔鶴の前にカレーを置くとまたキッチンの方へ行った。美味しそうなカレーを前にしてぐぅ、と小さな音が瑞鶴の腹から鳴った。恥ずかしそうに顔を赤らめる瑞鶴を見て翔鶴は小さく笑う。 「笑わないでよ翔鶴姉!」 「ごめんなさい怒らないで…ふふ」 提督が片手にカレー、片手にスプーンを三つ持って戻って来た。ちゃぶ台の前に座るとスプーンを二つ、瑞鶴と翔鶴に渡した。 「待たせたな、じゃあ食べよう」 提督は手を合わせた。瑞鶴と翔鶴もそれに倣う。瑞鶴は手を合わせながら、絵描きの人がいたらこの場面も描いてくれただろうか、と考えた。瑞鶴はまだ色んな事を知らない。絵描きの人が知っている景色のほとんどをまだ直接見た事がない。それはとても寂しいことではあるけれども、これから自分自身の目で見ていけばいいのだ。きっとそこには絵描きの人が知っている景色も、知らない景色もあるだろう。 けれども、今は、この食事を楽しむのが先だ。 「いただきます」 三人の声が重なった。 今日は金曜日、カレー日和だ。
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/37088.html
熱風提督インフェカイト 火文明 (7) クリーチャー:フェザーノイド/アーマード・ワイバーン 5000 ■相手のターン中、このクリーチャーが手札から捨てられる時、墓地に置くかわりに出せる。 ■マナドライブ4(火) 自分のマナゾーンにカードが4枚以上で火文明があれば、このクリーチャーは「騎乗」を得る。 ■このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から3枚を表向きにする。その中からフェザーノイドとアーマード・ワイバーンを全て手札に加え、好きな順序で山札の下に置く。 ■アクセル(このクリーチャーにクロスギアがクロスされている時、このクリーチャーは次のAC能力を得る) AC-相手の呪文やクリーチャーの能力で、自分の手札は捨てられない。 作者:白山羊 騎乗を持つフェザーノイド。 旧型マッドネスで場に出せて、cipで手札補充を行ういわゆる提督。 さらにアクセルにより、自分の手札が相手のカードの能力で捨てられなくなる。 マナドライブを達成すれば騎乗による踏み倒しも行える。 関連項目 機動 騎乗 カードリスト:白山羊 評価 騎乗の条件をマナドライブ4に調整しました -- 白山羊 (2022-01-13 20 18 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/164.html
前回の話 自分は鎮守府の長とかいう重役についているが、そんなに歳は行っていない。 むしろ他の鎮守府の長と比べれば若いほうだろう。 だから自分以上に歳若き少女にあのようなことをされては鮮明に脳裏に焼きついてしまう。 そしてそれをネタに自分のそれを慰めてしまうのも仕方のないことなのだと弁明したい。 人間の三大欲求の一つを抑えろというのは酷な理屈だと思う。 今日もそのことをネタに処理をしてから寝ようと思っていたら 狙ったかのようなタイミングで大井が乱入して今に至る。 「っ……はあ……」 女の事情は知らないが、男が達した直後は誰しも悟りを開いたような気分になる。 大井の口内で達した直後、心の中で一体誰に向けているのか自分でも分からない弁明を並べていたが、 自分のそれが冷たい外気に触れたとき現実に引き戻された気がした。 大井の口と自分のそれとの間に透明だか白だか分からない色をした糸が一瞬だけかかった。 「ん……んぐ……んぐ……」 秘書のときでもプライベートのときでも何かと自分より上に立ちたがる大井は、男の精を懸命に嚥下しようとする。 目を瞑り眉をひそめる表情から、経験豊富なわけでもなくその精が味覚に優しいものではないのも分かる。 一体何が大井をそこまで駆り立てるのか分からない。 その姿は口内に放出した精を吐き出させようとちり紙を差し出すのもまた無駄だと思わせた。 「はあっ……」 嚥下し終わったらしく、ぴったり閉じていた口を半開きにさせて熱い吐息を漏らした。 口の端から零れた精液がねっとりと滴り落ちる。 とても扇情的な空気が漂うもこれより先へは理性をもって押し留まった。 中途半端であることは自分も分かっている。 前回と全く状況に相違はなかった。 もしも自分が日記帳を所持していたら、 数日前のページをコピーしてそのまま今日のページに貼り付けることになるのだろうか。 そんなことがあろうとも朝日は何も知らないかのように昇った。 軍服に身を固め、いざ寝室から直結した執務室へ出陣すると―― 「あら、おはようございます。提督」 いつもの調子で既に起床済みの大井の笑顔に出迎えられた。 自分の寝起きの半覚醒状態もまたいつものことだが、最近の近況の変化を思い出しどもる。 「……あ、あぁ。おはよう」 「私はもう朝食を済ませましたから、先に執務に入りますね」 何日も聞いたその台詞を残して、増設した席につき執務を始めた。 自分がこうも腑抜けていても大井がこうでは、調子が狂う。 普段は互いに軽口を叩き合う仲だったはずなのに。 洗面所で顔に水を浴びて意識が覚醒しきった頃には、 理性があるなら最初から押し留めておけだの向こうの気持ちも汲み取ってやれだの若干の自己嫌悪に包まれた。 しかし軍隊に土曜日曜はない。月月火水木金金あるのみ。軍人として恥ない姿で出なければならない。 食堂はまだ艦娘はまばらにしかいなかった。 と言っても、全ての艦娘が提督やその秘書艦よりも早く起きられても特に任せる任務はないので不満はない。 艤装開発の担当艦など、前日夜に、明朝の何時にどこどこへ来いという通達を送った以外の者は 昼まで起きないようなことでもなければそこら辺は好きにしていい。 というより艦娘の生活ぶりなどそれほど関心がないというのが本音だ。 こちらの存在に気づいた食事中の者から飛んでくる挨拶に応える。 カウンター席につき厨房を切り盛りする補給艦間宮に声をかける。 「提督さん。おはようございます」 「おはよう。今日はあ号定食を頼むよ」 「かしこまりました」 「御待遠様です」 「うむ。ところでちょっと聞きたいことが」 「なにかありましたか?」 「最近大井に変わった様子はないか」 「大井さんですか。先ほどもこちらで一人で食事していらしたんですが……。 そうですね、普段よりもどこか物憂げそうな、眠そうな顔をしているような気がしました」 「なるほど」 「何か……ありました?」 「ちょっとね。ただ喧嘩とかではないから大丈夫だと思う。……頂きます」 「はい、召し上がれ」 軽く一礼をしてから間宮は厨房に引っ込んでいった。 では早速と納豆を掻き回すところから取り掛かった。 定食一膳を米一粒豆一粒残さず平らげたので執務室に戻る。 扉を開けると依然として大井が執務に励んでいたが、よく見ると筆を持った手が動いていない。 顔もいつもと変わらぬ澄まし顔のはずだが、なるほど言葉には本当に言霊が宿っているというのか 自分に挨拶してきたときと違い物憂げそうにも見える気がする。 「大井?」 「……あ、提督、なんですか?」 ほんの少しの間を持ってやっと返答が来たところを見るに、声をかけるまで気づかなかった? 大井は別に索敵能力が秀でているわけでもあるいはその逆を行くというわけでもないが、 それにしてもこれは異常だ。 「……大丈夫か? 執務なら私に任せて休んでもいいぞ?」 「い、いえ、問題ありません」 オホホ、とごまかされても自分の中に芽生えた疑心は消えない。 まさか昨晩に自分の精液を飲み込んだのが悪かったのでは、と的外れな推論に行きつきそうになった。 酔狂な理論略して酔論は捨て置くとしていくつかの書類を抜き取り、 大井に対する心配は消えないまま自分は工廠へ向かった。 「提督、いいものは開発できました?」 「今日もイマイチの出来だったよ。結構やってきたと思ったがうまくいかないもんでな」 「まあ。今までぼんやりとやってきて経験になってないんじゃないですかあ?」 「ンなわけあるか。私はいつも真面目にやっているぞ」 結局目ぼしい成果は出ず開発担当艦とともにしょんぼりした面持ちで工廠を後にしてきた。 執務室に戻ってきてみれば大井は黙々と執務を片付けている。 先の物憂げな様子は特には見受けられない。 軽口は叩き合いつつ自分も執務を片付けに入る。 「そうでしたね。提督は艤装開発だけは真面目にやっていましたね」 「執務や指揮も真面目にやっとるわ。沈まない程度に休みなく出撃させるぞコラ」 「脅す気ないでしょう」 「よく分かったな」 「提督は優しいですから」 不意打ちだった。 突然の好意的な言葉に何と返せばいいか分からず、 筆を走らせていた手を止めて隣の机に目をやったが、大井は書類に目を伏せている。 「……そうかね」 「そうです。何ヶ月秘書をやっていると思ってるんですか」 「かれこれ何十年になるんかのう婆さんや」 「魚雷、打ちますよ?」 「コストが高いから無駄遣いはよしなさい」 「開発なら練度の高い私と組めばうまく行くかもしれません」 「大口径主砲が作れるというならお願いしたいね」 「……」 「睨まれても困る」 …………………… ………… …… 午前の演習や幾度かの出撃も一通り終わらせ、昼食もまた食堂で済ませた。 しかし紙の山はそこそこ削れただけで未だ堂々たる面持ちで私と大井の執務机に鎮座している。 夜のプライベートの時間を少しでも多く作るべく私語もそこそこに執務一掃を進める。 たまに大井の方が気になってこっそり目をやるのだが―― 「……」 筆が動いていないだけでなく瞼も開いていなかった。 執務中に船を漕ぐなんて大井らしくない。一応艦娘は船にも分類されると思うけど。 しかし毎日秘書をさせるのは『こき使っている』と言えてしまうだろうか。 それが原因なら少し考えなくてはいけないかもしれない。 ああ、 物憂げそう ではなく正しくは 眠そう だったんだろう。 「大井」 「……」 「大井」 「……はっ、北上さん?」 「……違うよ」 夢に出るほど仲がいいのは分かった。 「……休憩入れようか」 「す、すみません。でも――」 「ああ疲れた」 本当はそれほど疲れはないが休憩を遠慮しようとする大井の言葉を遮る。 そして懸念事項の確認に出る。 「大井。お前、寝不足なのか」 「いえ、そんなことは――」 「何ヶ月お前の辛口に付き合ってきたと思ってるんだ。寝不足の原因が私なら遠慮なく言ってくれていい」 「……眠気があるのは確かですが、提督のせいではありませんから」 「……そうか。まあ眠いなら仮眠を取るといい」 私が大井に過剰な負担をかけているのではないようで一安心だ。 嘘をついている可能性も否めないが、思いついたことをすぐ口にする大井に限っては考えにくい。 冬とはいえ軍帽の中の熱気が篭って鬱陶しいので軍帽を脱ぎ、席を立つ。 ストーリー性などなく毎日読んでいて面白くない幾多の書類を一時放棄し、自分は文庫本を手に寝室へ向かった。 夜のプライベートの時間を増やすとは言ったが結局これもプライベートの時間だった。 ベッドに横になり栞を挟んだところから読み進めていると扉が叩かれた。 「入れ」 扉が開かれ、扉を叩いた者が姿を見せる。 この寝室に自分以外が入るのも珍しいが、訪れた客が大井とは更に珍しい。 ひとまず文庫本に栞を挟み上体を起こす。 「……提督、仮眠を取りたいのですが」 「……それで?」 「生憎と私の部屋の布団は今干していて使えないんです」 「北上にでも借りれば――」 「ここで寝かせてください」 「……私は出たほうが――」 「ここにいてください」 「……ああ」 どうしたのだろう。 言葉を遮られた挙句、目を直視しているとよく分からない何かに気圧される。 ベッドに座ったままでいると大井がベッドに上がってきた。 本来この部屋で寝るのは提督1人なので寝るならこのベッドしかない。 真ん中のスペースを開け、ベッドの端に腰掛けて文庫本を開こうと―― 「あ、提督、動かないで横向いてください」 「うん?」 意味の分からない願いの意図が読めないが、 ひとまず言うとおりにしようと横を向き壁に背を預ける。 後ろの窓からは午後の西日が差し込んでいる。 「……ふう。提督の膝、硬いですね」 「……お前それで眠れるの?」 「多分眠れません」 「ならそっちに枕――」 「提督が頭を撫でてくれれば眠れます」 おかしい。 大井はこんなに甘えてくるキャラだったか。 今日のぽかぽかとした暖かい日差しにやられてしまったのか。 「撫でればいいんだな?」 「はい」 おそるおそる大井の長い茶髪に手を置き動かす。 特に文句はないようでそっと目を閉じた。沈黙に包まれ、工廠の喧しそうな作業音が聞こえるようになる。 「……提督は他の子にも、こういうことしてますか?」 「している」 「……そうですか」 「……」 「……」 「……他の子にもしていたら、嫌か?」 「嫌です」 「でも私にとってはこれくらいのことは、他の子にも平等にしてやりたいと思う。 ……ただ、この間の夜や夕べみたいなことはあまり色んな子にやられたくはないな」 自分は何を言っているのだろう。 白昼から聞かれてもいないことを口から零してしまっている。 自分もまたこの暖かい日差しにやられてしまったのかもしれない。 「そうですか。……ふふ、ちょっと嬉しい」 嫉妬していたらしい先ほどと違い晴れた声で微笑んでくれた。機嫌を損ねずに済んだらしい。 いつも自分に向かって辛辣に物を言う大井もこうして優しい笑顔を見せ、優しい声を聞かせてくれるのだ。 もちろんいつもの掛け合いも楽しいものではあるが、こうして心を開いてきてくれるのはこちらとしても嬉しい。 あまり疲れてはいないがこの大井といると癒される。 今日の午後は西日を受けながら大井を寝かしつけるためにサラサラした髪を撫でることに没頭した。 執務? また今度やります。